「水野がみんなに言いたいことがあるそうだ」
 いかにも熱血漢といった担任が切り出した。
「水野、前に出ろ」
「…はい……。ぇと…私は……」
「早くしてくれない?」
 女生徒が急かした。
「そだね。じゃあ言うけど…僕は聖霊学園の生徒」
「あんたみたいに地味なのが聖霊学園の生徒なわけないでしょ!?」
「『人を見かけで判断しちゃいけません』って幼稚園で習わなかったの?幼稚園児以下だね。これが聖霊学園の生徒手帳。……ってあぁ、写真そっちだったか」
 写真に写っているのは、強気そうな顔をした、ショートヘアの少女。ただ普通じゃないのは、その写真に写る少女は眼も髪も瑠璃色だったのだ。
「じゃあ、取ろうかな。君たち信じてないし」
 そう言って、頭に手を掛ける瑠璃。
「これヅラなんだよね」
 そう言って、黒髪を“脱ぐ”瑠璃。
「これもカラコン」
 瑠璃は眼から黒いものを取る。そこに現れたのは、写真と同じ瑠璃色の少女。
「これで信じてくれた?」
 瑠璃の言葉に唖然とするクラスメイトたち。
「ははっ、すっごい間抜け面。ってことで。…ねぇ、伊藤さん?君には制裁を下さないとねぇ?」
 そう言う瑠璃は、一番後ろの席に座る伊藤の正面で笑っていた。先程まで、教室の前にいたはずなのに。
「そうだね…。“洪水”」
 瑠璃がそう言うと、教室が一気に水浸しになった。するとすかさず瑠璃は「“津波”」と言った。大きな波が伊藤に向かってくる。瑠璃は、水の中でも平気そうな顔をしていた。
「ハハッ♪水浸しだねぃ♪伊藤サン」
 笑う瑠璃。怯える伊藤。
「ねぇ、橘さんのこと、もう虐めない?」
「ぁ…あ…」
「虐めないよね?」
 瑠璃は、銃を伊藤に突き付ける。
「ねぇ?」
 カチャッという音がした。
「僕もう待てないし撃っちゃうよ?」
「も…もうやらないから!わ、たし…もうたち、ばな……さんの、こと…虐めない…」
「…だって♪よかったじゃん橘さん」
 ははっ、と笑う瑠璃。
「………は、ぃ…」
 その教室で笑っているのは瑠璃ただ一人だった。
リゼ