魔王の娘
大陸の北東に位置するサンステルクは、魔王の住まう領域に最も近い国である。
正確に言うと最も近い国になった。
これまで最も魔の領域に近かったルクリアは、先月戦火に飲まれ、魔族が跋扈する魔界となったからだ。

サンステルクの王、ジラートは苦い顔で王座から各宰侯を見渡した。

「それは余に人柱となれ、ということか?」

一列前に座る宰相がこうべを垂れながら、起立する。

「魔王特使団は魔王の御息女との一夜の契りを要求しております…飲まねば武力行使に移る、と」

別室で待たせている異形の一団はとんでもない要求を持ってきた。曰く、魔王の娘と国王の夜伽を所望する、と。

魔王の狙いは何なのか、何かの策略なのか、それとも単に娘のワガママを叶えてやりたい親心なのか。たしかに国王は『サンステルクにジラートあり』と言われた名高い美男子であった。煌めく金髪に切れ長のサファイアブルーの瞳、武に通じた王らしく、その体は隆々として逞しく、国内外から賛美されてきた。

「フン、忌々しい。どんな醜女か考えるのも悍ましいが、国の為なら致し方あるまい。その魔王の娘とやらを抱いてやろうではないか」

王妃には内密に。
そう言い残してジラートは諸侯を残し、部屋を後にした。


満月が雲に隠れて見えない夜。
魔王の娘がジラートの城へとやってきた。

王麾下の者には内々に指示された通り、魔王の娘を王の寝室へと案内した。
魔王の娘はしずしずと漆黒のドレスを引きずりながら歩く。頭から黒いヴェールを被り、更に口元にも黒いレースを覆っているのか、全体的にその容貌はうかがい知れなかった。

一方、ジラートは己の寝室で身支度を整えて待っていた。均整のとれた肉体をバスローブで包み、金糸のような髪を香油で後ろに撫で付けてその時を待つ。

遅い。

夜も深くなった時ようやく寝室の扉が開いた。

魔王の娘が静々と歩み寄り、介添え役が扉を閉めた。

「…。」

「…。」

なんだ喪服のような衣装じゃないか。
てっきり派手派手しく着飾ってくると思ったジラートは意外に思った。


と、その時魔王の娘が『崩れた』
いや、正確には崩れたわけではない。
しかしジラートの目には突然魔王の娘の体が崩れてドレスだけが取り残されたかのように見えた。
だが、真実はそうではない。ただ本来の姿に戻っただけである。

「なんだコイツは!?」

ようやくドレスの残骸から這い出た本体に目がいったジラートは慌てて後ずさる。
そこには細長い蛭の集合体のような醜悪な触手が蠢いていたのだ。

「くそッ」

やはり私を弑する為の刺客だったか!
咄嗟に剣を取り交戦しようと身構えるも、それより早く触手はジラートの両手に絡みつき、キツく締め上げていた。

「ぐ…っクソっ…!」

更には両足も拘束されて身動きが取れなくなる。

最早これまでか…。
諦めて目を閉じた時だった。

触手がバスローブの下に入り、己の逸物に絡みついてきたのは。

「は?」

突然の感覚に青ざめる。
今一度彼らの要求を思い出す。
魔王の娘との伽。
まさか、そんな、この化け物が本当に…

「あっ、んあああ!?」

触手の先端が割れたと思うとおもむろに、ジラートの逸物を咥える。
おぞましいものに自身の急所を包まれる恐怖と、そのおぞましいものから感じたことのない快楽を受け取っている浅ましさに体が震える。

ジュボッジュボッぐちゅっぐちゅっ。

謎の粘液を纏う触手が、逸物を、乳首を、口内を、そして有ろう事か後ろの蕾にまでも及び、トロトロと理性を溶かしていく。

気持ちいい。
気持ちがいい…。

ヌメヌメとした触手に乳首を擽られるのも、逸物を女の膣に入れたかのようにぐちゃぐちゃにされるのも、細い触手が前立腺を弄るのも。

「あっ…あっ…ああ」

徐々に思考が歪んでただ、快楽を享受することだけしか考えられなくなる。

逸物を包んだ触手からはグチャグチャと、既に放った白濁のいやらしい音が響く。
まるで食われるかのような暴力的な気持ち良さに、逸物がそのまま溶けてしまう錯覚に陥った。

もう何度精を放ったのかわからない。
すべて触手がゴクゴクと吸収していく。

「あっ…ああ…あっ…」

もう出ない。
そうジラートが怯えると同時にキュポンッと逸物から触手が取れる。
精液を溜め込んだ部位が膨らみ、他の触手より太くなっていた。

ようやく解放される…?
気怠げな目で触手を見上げると、触手はジラートの両足を持ち上げてまるで赤ん坊のおしめを変えるかのような体制を取らせる。
そして蕾を弄っていた細い触手が抜け、穴を広げるようにする。

「え、ま、まさか…」

散々弄られたソコに己の精液で膨らんだ触手が挿入り込む。

「がっ…ぁは…!」

先程の触手とは比べ物にならない太さに仰け反る。そしてその触手の奥から精液を押し出すように球体のものがボコボコと穴からジラートの腹へと吐き出された。

「ぐっ…ぅえ…あ、ハッハッ…ハッ?」

ボコっボコっ…美しい腹筋の下に己の精液と触手から産み付けられた卵が混ざり合い、まるで妊婦のように膨らんだ腹を恐る恐る触る。


「アアアアアアア!?」

異形のモノに孕まされたショックで半狂乱になりながら手足をばたつかせるが、触手に絡め取られた体は身動きが取れなかった。

そして腹部をかき混ぜるように触手が動くと、しばらくして穴から触手が抜けた。

ボコっ…ボコっ…ドポォ…。

いくつもの卵と共に。



「王陛下!?」

「何故このようなところに!?」

「そのお姿は一体…!」

「なっ、おやめください!おやめーっ!」

王と魔王の娘との伽を待つ麾下達が見たのは、白痴のように笑いながら下半身を白濁で汚した全裸の王だった。

「化け物、化け物が、余の腹に…余の…ああああ、あははははははははは!?」

そう泣き笑いのまま己の腹に手に持った剣を突き立てた。


サンステルクの王、ジラート乱心。
自らに剣を突き立てて崩御。
その後魔王の麾下によって制圧。
サンステルクは魔王の国となった。

その報告を恍惚とした表情で受け取る魔王。

「よくやった」

麾下の者に労いの言葉をかけると、すぐに己の部屋に閉じこもる。

此の所魔王は奥方との関係がお盛んなのだ。
魔王の娘は幾らでも生まれてくる。
魔王自身の腹によって。


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