百合の墓

花係なんて、ろくな係じゃない。
昼休み、膝丈のプリーツスカートをはためかせながら私はグランドへ向かっていた。

そりゃあ綺麗な花のお世話は憧れるし、ここは女子校だからそういうのが好きな子はいくらでもいる。

だけど実際枯れた花の処理を嫌がる子が大半で、結局おしつけられる形で私がなったのだった。

百合の花は良い香りだし、柔らかそうにくるんとカールした花弁が可憐だ。

けど、枯れて腐ってしまえばこんなものだ。ひどい匂いで、根に近い方からドロドロに溶けている。


それをバケツに入れてグランドの隅へ持っていく。
そこに埋めてやるのだ。

肥料になるから良いだとか。担任がそんなことを言うものだから私は手をドロドロにさせて穴を掘る。

バレーボールをしている子達の声が聞こえ、なんだか惨めなような、それでいてグランドの中で一人特別な場所にいるような不思議な気分になる。



「ね、なにしてるの?」

突然、上から声が降ってきてドキッとした。
おまけに相手は変人で有名な鈴菜だったから尚更だ。

この子は別に変わった見た目をしているわけでないのに、本当に変わっている。何が、とは言えないが、彼女の持つ雰囲気がとしか。

私も彼女もクラスの除け者だが、私は彼女ほど目立つ存在ではないので一緒にいるのは苦痛だった。
好奇の目が私にも降り注ぐような気がした。

「あなほってるねー!あ!おはなだ!」

鈴菜の
柔らかな髪がチラチラ見える。

「ゆりのおはかだね」

突然そんなことを言い出したので面食らった。

百合の墓。本当にこの子はおかしい。
しかし、この柔らかい土の下には高潔な花の魂が眠っているとしたら少し素敵だと思った。

「わたしもやるー!」

鈴菜がぎこちなく土を均す。
ほんの少し触れた手は、頼りなさげで柔らかかった。

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