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「わたーしの心をーくだーくようにー」
何故こんなことになったのだろう。
一生懸命生徒会長として職務を全うしてきたはずだった。
なのに、そんな俺を待っていたのは手酷い裏切りだった。
「吹きつけるー岬の風―」
山崎だとか言う転校生に熱を上げた生徒会の奴らの分まで仕事をし、混乱する学校を守りたかった。しかし、その結果がこれだ。
「激しくー寄せくる波は強くー」
睡眠不足でヘロヘロの体、誹謗中傷、そして会長職のリコール。
精神的にも肉体的にも追い詰められた俺が一人でフラフラ歩きながら、歌なんて歌っていたら頭がおかしくなったとでも言われそうだ。
「その勇気―与えてー」
けど、そんなのどうだっていい。
周りになんて言われようとも、どうせ俺は一人なのだ。
だいたいこの中庭には滅多に人が来ない。
あるのは荒れた花壇と小さな池だけだ。
「ああ大きな波よー」
それにしてもこの曲なんだっけかな?
合唱コンクールで歌ったのは覚えてるけど…
ぼんやりしながら池を覗く。
深緑色の水面には顔色の悪い俺の顔が歪んで映っていた。
すると、水面にキラリと光るものがあった。
鯉でもいるのだろうか?
そう思い身を乗り出した瞬間―。
「う、うわ!?」
光る元から渦が巻き起こり、俺はその中へ吸い込まれてしまった。
なんだこれ…
死ぬのか、俺…?
こんな後悔したままで、裏切られたままで、あいつらを見返せないままで…
くそっ、冗談じゃない!
しかし、そうはいっても体はもう言うこと聞かないし、意識も、だん、だん…
完全にブラックアウトする前にふと思い出した
『ああ、あの曲「白いライオン」だ。』
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