手を取って


ホリン×シルヴィア前提

アレスではなくセリスがダーナ城を訪問した場合の話です



「大丈夫?」


ブラムセルに捕まってしまった私を助けてくれた私を助けてくれたのはアレスじゃなくてセリス様だった。思えば、この時から彼のことを好きになったのかもしれない


アレスが憎んでいるというシグルドっていう人の息子のセリス様。アレスは父の仇であるというセリス様を討ちたいと言っていた。アレスのお父さんもセリス様のお父さんも騎士だったのだから人殺しなんかじゃない。そう思ったらセリス様に会ってみたくなった


アレスのお父さんとセリス様のお父さんは親友だったっていうことも聞いた。騎士に悪い人はいないと思う。私にはシグルドっていう人が悪い人だとは思えなかった


勿論、セリス様だってそうだ


「立てるかい?」

「は、はい!」


セリス様に差し出された手を握って立ち上がる。その手が温かくて安心した


「助けてくださってありがとうございます。セリス様」

「どういたしまして。君は私のことを知っているのかい?」


私がセリス様のことを知っているとは思わなかったのか、セリス様は不思議そうな顔をしていた


「はい。ダーナの街でも噂になっていましたから。アレスはあなたを父の仇と言っていましたけど、私にはそうは思えなかったんです」

「え?」

「ブラムセル達はあなたのことを反逆者シグルドの息子と言っていました。けど、反逆者の前に彼は騎士だった。だから、人殺しが仕事なんかじゃない。もし、人殺しだとしたならイザークの民を救ったりはしない」

「………」

「今、帝国の支配下である国々では人々が圧政に苦しんでいる。セリス様の活躍で勇気づけられた人は沢山います。私もその内の一人です」

「そうか…君はそんな風に思ってくれていたんだね。ありがとう、嬉しいよ」

「あ、いえ…すみません。偉そうなことを言ってしまって…私みたいな踊り子がこんなこと言える立場じゃないのに…」

「どうしてそう思うんだい?私は怒ってなんていないよ」

「え?」


私の手を握ったままのセリス様。手を握る力が強くなっていくのを感じた


「まだ力は目覚めていないけど、救いたいんだ。帝国の圧政に苦しむ人々を…」

「セリス様…」

「ごめんね、こんなことを君に話して。さ、早くここから逃げて。戦いはまだ続くだろうから危険だ」

「待って!」


私はセリス様のマントの裾を掴んで彼を引き止めた


「私、踊り子のリーンといいます。あの…私も解放軍に加えていただけませんか?」

「え!?」

「私は踊り子ですが、戦うことも出来ます。足手まといにはなりません…だから…!」


セリス様の力になりたい。帝国に従っていたら皆は苦しみ続ける。何故かは分からないけど、そんな気がしてならなかった


「駄目だ。危険かもしれない。そんな戦いに君を巻き込む訳には…」

「セリス様、私は大丈夫です」

「え?」

「私だって何もしていない訳ではありません。アレスに護身術として剣を教えてもらいましたし、全然戦えない訳ではないんです」

「リーン…」

「私はこれ以上皆が苦しんでいる姿を見たくない…戦うことで救えるのなら救いたいんです…」

「そうか…それが君の決意なんだね」

「はい…」


セリス様は私の肩に手を置いた


「リーン、君の力を私に貸して欲しい」

「!?」

「これから戦いは激しくなっていくだろう。それでも君は大丈夫かい?」

「はい!」

「分かった。じゃあ、私と一緒に行こう。でも、無茶だけはしないようにね」

「はい…!セリス様、ありがとうございます!」


セリス様の差し伸べた手を取って私は歩き出した。この先何が待っていても私はこの人についていく


皆を助けたい気持ちも勿論あるけれど、セリス様の力になりたいという思いもあるから…


終わり
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