雪の降る日に
雪が降っている。あまり見慣れない雪にティルテュは好奇心を抱いていた。白くて冷たい雪を見ていると、ああ…本当にシレジアに来ているんだなという実感も湧いてくる
「雪ってこんなに冷たいのね」
小さく呟いてから地面に積もっている雪を手に取る。ひんやりとした雪はやはり冷たい。少し握れば体温で溶けてしまう。雪は儚いもの…握ったせいで溶けてしまった雪はティルテュの手の中で水になった。ティルテュが雪を握っていた手を見ていた時
ツンツン
「?」
誰かに肩を叩かれた
「何してるんだ?雪が降っているのに外に出て」
「レヴィン…」
ティルテュの肩を叩いたのは恋人のレヴィンだった
「外に出たい気分だったの」
レヴィンはティルテュの言葉を聞いてため息を吐いた
「だからって薄着で外に出るな。風邪引くだろ?」
「大丈夫……くしゅん!」
「ほらな」
くしゃみをしたティルテュを見たレヴィンは着ていた上着をティルテュに羽織らせた
「ごめんなさい…レヴィンは寒くない?」
「俺は平気だ。それにティルテュに風邪を引かせる訳にはいかないからな」
「ありがと…」
「どういたしまして」
ティルテュはレヴィンの言葉を聞いて顔を赤くした
「雪を握っていたのか?」
「え…どうして分かったの?」
「手が濡れてる」
レヴィンは雪を触っていたティルテュの手を握った。水に濡れていた手はとても冷たかったが、ティルテュの手を握っていると思えば冷たさは感じなかった
「触っていたら溶けて消えちゃった。雪って綺麗だけど儚いものなのね」
「そうだな」
レヴィンはティルテュの肩をそっと抱きしめた。外に出ているせいか、二人の体は冷えていたが、寄り添うことで温かさを感じた。レヴィンがティルテュの肩を抱いていない方の手を見た時だった
「あ、雪の結晶」
「え?」
レヴィンの手には小さな雪の結晶があった。ティルテュはレヴィンの手にある雪の結晶を見ようとしたが、既に溶けてなくなってしまった
「消えちゃった…」
「見たいか?」
「うん…」
「じゃあティルテュも手を出してジッと見てみればいいんじゃないか?」
レヴィンに言われてティルテュは手を出した。ティルテュの手に雪が落ちる。その手に落ちた雪を見ると、綺麗な雪の結晶がそこにあった
「わあ…」
ティルテュが感嘆の声を上げた
「初めて見た感想はどうだ?」
「とっても綺麗…」
「よかったな」
「うん!」
ティルテュは嬉しそうに笑って答えた。すると、ティルテュが体を震わせた。雪が強く降ってきたのだ
「そうか。じゃあそろそろ戻るぞ。あんまり外にいたら風邪を引く」
「そうね…雪も強くなってきたみたいだし、風邪を引いて出撃出来ないなんてみっともないもの」
「あはは、そうだな」
風邪を引いて出撃出来ないのは確かにみっともない。二人は名残惜しいとは思ったが、その場を後にして城へと戻っていった
「また二人で外に出ようね」
「そうだな。けど、次は厚着しろよ?」
「はーい」
ティルテュはレヴィンの腕に抱きついた。レヴィンは驚くが、ティルテュの愛情表現を嬉しく思い、優しい目でティルテュを見ていた
終わり
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