トマトのゼリー
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「ロックス、こんな感じでいいのかな?」
「どれどれ…はい!いい感じですよ!」
「本当!?」
「はい!これならクラトス様も喜んでくださいますよ!」
「そ、そうかな…?」
ここはバンエルティア号の台所。台所では、ロックスとコレットが何かを作っていた。何を作っていたのかというと…
「コレット様が愛情を込めて作ったんですから大丈夫ですよ」
「う、うん…けど、クラトスさん食べてくれるかな…これ、クラトスさんが苦手なトマトが主なものだし…」
「確かにクラトス様はトマトがお嫌いですからね。いつもサラダにあるトマトも残していますし…」
「うん…」
「でも、コレット様が作ったものは野菜をお菓子にしたものですし、食べてくれると思います。(何よりクラトス様はコレット様には弱いですからね)」
コレットが作っていたものはトマトのゼリーだった。クラトスとロイドはトマトが嫌いでよく残す。ロイドはリフィルに脅されて残すことはないが、クラトスはトマトには手をつけようとせず、残してばかり。それをよくないと思ったコレットは野菜をお菓子にすれば食べてくれるんじゃないかと考え、ロックスにトマトのゼリーの作り方を教わっているのだ
「………」
「コレット様、あまり深く考えないで下さい」
「え?」
「コレット様が不安そうにしていたらクラトス様も不安になってしまいます。それにクラトス様のために作ったんですからクラトス様もきっと分かってくださいますよ」
「ロックス…うん、そうだね!」
ロックスに励まされてコレットは笑顔になった
「後はクラトス様を待つだけですね」
「うん!」
……………
「こ、これは…?」
仕事を終えて帰ってきたクラトスが食堂へとやって来た。食堂へ来たクラトスの目に入ったのは苺?のような色をしたトマトのゼリーだった
「クラトスさん、おかえりなさい」
クラトスが帰ってきたことに気がついたコレットがニコニコ笑ってクラトスを出迎えた
「ああ。ところでこれは…」
「ゼリーです」
「見れば分かるが、何のゼリーだ?」
「トマトのゼリーです!」
「と、トマト…!?」
屈託のない笑みで言うコレットにクラトスは眉を寄せる。だが、コレットが嫌味でこんなことをする訳がないことは分かっているため、露骨に嫌そうな顔はしていなかった
「あの…お節介かもしれないと思ったし、クラトスさんが嫌いだっていうのも分かっていたんですけど…トマト嫌いを直して欲しくて作ったんです」
「私のためにか?」
「は、はい…」
クラトスはジッとトマトのゼリーを見つめる。コレットはというと、不安そうにクラトスの方を見ていた
「食べて…くれませんか?」
「…………」
クラトスは迷った。クラトスにとってトマトは天敵だ。しかし、自分のために作ってくれたものを食べない訳にもいかない。そして…
「…………」
コレットの不安そうな顔を見たら食べる以外の選択肢はないような気さえする
「(やむを得ないな…)」
クラトスはスプーンを取った
「あ…」
「折角お前が作ってくれたのだ。いただくとしよう」
「クラトスさん…」
スプーンを持つ手は若干震えていたが、食べてくれることの方が嬉しかった。コレットも自然と笑顔になる。クラトスはゼリーを口にした
「…………」
「ど、どうですか?」
コレットは恐る恐る聞く。すると、クラトスは微笑みながら答えた
「美味いな」
「本当ですか!?」
「ああ」
「よかった…不味いって言われたらどうしようかと思っちゃいました」
クラトスの答えにコレットは嬉しそうに笑った
「これならトマトも食べられる。…ありがとう」
「は、はい…」
クラトスがたまに見せる微笑みを見たコレットは顔を少しだけ赤くして俯いていた。だが、クラトスがトマトのゼリーを食べてくれたことが嬉しかったのか、照れながらもクラトスに微笑み返しをした
終わり
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