一方通行
※アクゼリュスの崩落後ナタリアはルークが心配で魔界に残ったという捏造があります
一方通行な想いは苦しいだけだって今なら分かる気がするの
「ルーク、ほっぺにご飯粒がついていますわよ」
「え?どこだ?」
旅の途中で今日は野宿をすることになった。辺りは月明かりに照らされてはいるものの、かなり暗い。まるでそれは誰かの心情を表しているようだった
「ここですわ。とって差し上げますから動かないで下さいませ」
「分かった」
ナタリアがルークの頬についたご飯粒を取った
「はい、取れましたわ」
「ありがとうナタリア」
隣に座って微笑み合う2人。それを見たアニスが茶化す
「なんかルークとナタリアって新婚夫婦って感じだね」
「な、何を言いますの?」
アニスの言葉を聞いてナタリアの頬が赤く染まる。隣にいるルークも頬を赤く染染めていた
「だってさ、今のやりとりもそうだしアクゼリュスの時もナタリアはルークの側にいたでしょ?アニスちゃん達は置いていっちゃったけどさ」
「そ、それは…皆に責められているルークを見ていられなくて…」
ルークがアッシュのレプリカだと分かった後もナタリアはルークの側を片時も離れなかった。確かに昔はアッシュのことが好きだったかもしれない。でも…不器用だけど優しいルークにいつの間にか惹かれていたから。それにアクゼリュスのことがあってから彼の決意も聞いた。だからこそ…
「(私は…あなたを支えたいと思ったのですわ)」
「はわぁ〜ルークってばナタリアに愛されてるねぇ」
「な、何を言うんだよアニス!」
「おやおや、ルークもナタリアと同じことを言ってますよ?」
「ジェイド!あなたまでからかわないでくださいな!」
ぎゃーぎゃーと盛り上がる仲間達。ルークとナタリアも満更ではないようで苦笑を溢していた。ただ、その様子を黙って見ている人がいた
「……………」
それはティアだった。ティアはルークに好意を抱いている。ティアはナタリアとミュウと一緒に魔界には残っていた。2人が残った理由はルークが心配だったから。でも…
「ラブラブっていいよね〜」
ズキン…
「(分かっていたことじゃない…ルークとナタリアは恋仲だって)」
「ティア、どうしたんだい?」
隣にいたガイがティアに話しかけた
「…なんでもないわ」
「なんでもないっていう顔には見えないな」
「そんなことないわ。いつもと変わらないわよ」
そう言うティアの顔は暗い。視線はすぐにルークとナタリアへと向いてしまう。仲睦まじくて入る隙がないくらいだった
「ルークのことだろう?」
「え…どうして分かったの?」
ティアの問いにガイが微笑んだ
「君がルークに好意を抱いていることくらい分かるさ…見ていればね。それに俺は…」
君が…好きなんだから
「ガイ?」
「いや、なんでもない」
「ならいいんだけど…」
「あはは」
「…ねえ」
「ん?」
ティアは悲しそうな表情を浮かべた
「一方通行ってどうしてこんなに胸が痛むのかしら…」
「?」
「私がルークを好きでも彼の側にはナタリアがいる。どんなに想っていても…側にいるという願いは叶わない」
「ティア…」
それはガイも同じだ。ティアに好意を抱いていてもそれを口に出来ない。何故ならティアはルークが好きだから
「(君と同じだよ…俺も一方通行だ…どんなに俺が君を想っても君はルークしか見ていないんだから)」
それからガイとティアはお互いに言葉を発しなかった。想いが通じないことは悲しいことであることを実感している2人には幸せそうに笑うルークとナタリアを羨ましいと思うことしか出来なかった
終わり
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