痛みを吹き飛ばして−甘−

「えへへ、今日はアシタカが森に来る〜楽しみだなぁ〜」

ニコニコしながらは森の道無き道をすいすいと歩き進めて行く

普通の人間なら苦労するだろうがはサンと同じく山犬の元で育てられた、森一体のことは知っているし移動するなんて簡単である

しばらくして歩いているといつもアシタカを乗せているヤックルと出会った

「あっ!ヤックル!どうしたの?アシタカが見当たらないようだけど」

優しくて首元を触ってやると嬉しそうにすり寄って来た

「え?アシタカとはぐれちゃったの?大変、じゃあ一緒に探そう!」

ヤックルの紐をつかんで一緒に歩いているとサクッと変な音がした

次の瞬間、表現のしようのない痛みが足に突き刺さるように感じた

「あぁあっっ!!」

咄嗟に身体を引こうとしたが痛みのせいで動けなかった

よく足元を見ると野生の動物を捕まえる時に使う罠があった

鋭い刃先がの足を両サイドから挟み込むように深く刺さっている

とてもじゃないがの力では外せないほどに頑丈であった

とめどなく流れる汗を拭うこともできないほどの激痛に涙がにじむ

「や、ヤックル...お前はお逃げ、もうすぐ日も落ちる、肉食動物も行動し始める...それにまだ罠もあるかもしれないから...」

心配そうに私の頬を舐めるヤックルをひとなでして笑かける

「さぁ、早く...ごめんね、アシタカを探してあげられなくて」

渋々といったところかヤックルは闇の中に消えた

意識がまた戻ってしまい痛みがまたズキンズキンと脈打つように感じる

いたい...血も止まらない...そうだ止血しなきゃ

着ていた服を破き傷口をぎゅうっと押さえる

「んっくぅっっ」

汗とともに涙がこぼれる

それからどれだけたっただろうか

もう意識も薄れかかり視界が悪くなってきた

目をつぶろうとした瞬間

「!!」

やっくるに乗ったアシタカと山犬に乗ったサンがいた

アシタカはいち早くの元へ駆け寄ると傷口を見て眉間にシワを寄せると迷うことなく刃先に手をおきこじ開ける

「あ、アシタカっそれじゃあ手が...」

「そんなことはいいっ!今はそなたの事が第一だっ!」

やっとこさで罠から解放されるがじくじくとまた痛み出す足

「早く来てやれずにすまなかった」

「だ、大丈夫だって!」

アシタカは本当に申し訳なさそうにを抱きしめる

「ヤックル教えてくれたんだ、礼をいいな」

「ヤックル、ありがとうっ」

「アシタカ、もう日が落ちる、今はひとまずここを離れてから手当をしよう」

「あぁ、そうだな」

そういうとアシタカはの傷に触れぬように優しく横抱きするとヤックルに乗る

「へ、あ、アシタカ?!」

「ん?なんだ?痛かったか?」

平然とした態度でこちらを見てくるアシタカに顔を赤くさせる

「さ、行こう」

ぎゅうっとアシタカはを抱きしめると

「もう少しの辛抱だ、大丈夫だよ」

と優しく問いかけるアシタカには目尻が熱くなる








痛いに変わりないけど少しだけ痛みが吹っ飛んだような気がした






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