浜昼顔

浜辺を散歩した 靴を片手で持って裸足で。
海の水は汚く濁ってて、浜は太陽を浴びてて少し熱い。

「リゼルグ」

陽の光に顔をしかめていたら突然呼び止められて、声がした方を見やるとハオはしゃがんで花を見つめていた。

「…何見てるの?」
「花」
「………。」

言葉に詰まって、ボクはこれから歩くであろう道をしかめっ面で見た。

「さあ行こうか」

座ってたハオが立って言った。
ボクはそれに応じた。

「ねぇリゼルグ、この花あげる。」

そう言うとハオはさっきむしった花をボクにくれた。
ボクは小さく礼を呟いて花に目を落とした。
朝顔みたいな薄桃色の花

「この花はね、浜昼顔って言う花なんだよ。よく浜に咲いてるからこの名前が付けられたんだ。」
「…へぇ」

歩きながら話を聞く。
後ろからの風が強くて歩くのが辛い。

「賢く優しい って花言葉なんだ。まるで君みたいだろ?」

そう言って笑ってみせた。

「……ボクは、優しくなんか――」

今の言葉に繋がる言葉は“少なくとも君には。”

そんな差別をしている時点でボクは優しい人じゃない。

「僕はリゼルグの事、好きだよ。」

ハオはプライドとかそう言うのはあまりないみたい
ボクは黙って、靴と花を握り歩き出した。
この間あんな事があったから少しハオには逆らえないだけ
目を背けただけ。

日が沈み掛けていた。
水面に夕陽が映し出されていて ただ純粋に綺麗だと思った。

だけど横を向いた時に視界に映った彼の横顔があの時とは違ってもっと優しくて
きっと“綺麗”だとか“美しい”の言葉じゃ表せないくらいだった。

歩く度に揺れる頬に不覚にも、キスをしたいと思った 夏の午後
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リゼ