諦めの朝

朝になって、夢が覚めて
昨日の夢は今日の幻となって現れる。
寝ている間にお前がそっとくれた 実は気付いてたキスは 涙が混じってしょっぱく感じた。

俺はただ、眠ったフリをしてただけ。

十代が部屋からいなくなる間際の“今までありがとうな”と“さようなら”と言う言の葉が、しっかり聞こえたからなおさら痛い。

一人になってからすぐ起き上がって狭い部屋を見ていた。
さっきいなくなったばかりのアイツがいて でも本当はもういなくて
悲しみの連鎖が途切れなかった。

もう一度眠ろうと目を閉じてみた。
だけど完全に目は覚めていたみたいで眠れなかった。
仕方ないからオレは起き上がって、鏡を見て少し笑って見せた。相変わらずの血相の悪い顔に。

髪を軽く直してからしばらく外をぶらぶらした。
誰かの笑い声が今はとても羨ましく感じられて 心が寂しかった。
でも既に自分の心は諦めが生じているので ほんの少し、寂しいだけだった。
一歩歩けば十代の顔が頭に浮かぶ。
なんで どうしてこう 男って未練がましい生き物何だろうか。
寮の周りをウロウロしてたら時間になって、チャイムが鳴った。
いいや、今日は授業をサボってしまおう。

そう思っていたら足は急に よく十代がサボっていたあの崖に向かっていた。

ああ、そっちは駄目だ。
よかったら 止まってはくれないか、オレの足。
そんな問いかけは無様に流されオレはそこにたどり着いた。

「あ…」

流石に彼はいなかった。
期待はしてないのだけれど、しばらくそこに立ったまま見つめてた。



『よぉ万丈目!お前もサボリかよ?』

『馬鹿か貴様は!!オレはお前を授業に引っ張りにきただけだ…っ!!』

『なんだよ、オレがいないと寂しいのかよ?』

あの日の二人の声が聞こえる…。
どうしてこの日も、あの日も変わらずに地球は回って行くんだろうか。
出来れば夜の暗い所でしばらく止まって欲しいのだけど。






今日、結局彼は来なかった。
全部の授業を出たみたい。
なんだかオレは一人でもう来ない彼を待ってたみたいで恥ずかしい。

もう彼の手を握れない。もうあの日に帰れない。
だから、二度と来ないで、諦めの朝

[*前へ] [#次へ]

リゼ