繋いでたいのに

ふとした時に思う、自分は誰で何者なんだろうって
だって毎日同じ日々を過ごして 結局一年の半分くらいは無駄に過ごすんだ。

「もう、帰らなくちゃ…」

暮れていく夕陽のオレンジが悲しかったのは 君とまた、さよならをいなくちゃいけないから。
もっと自由にこの地球を回せたら、今を長く、長すぎる夜を短く変えて
君ともっといたい。

「送っていくよ」

三沢がオレの手を握る
話したくない、ぬくい手。
一歩、一歩進む ああ、オレの家がここからずっと ずぅっと遠くて
ずっと、この人の手を握っていれたらなぁ

「…帰りたくない」
「………。」

また さり気なく出た我が儘が あなたを困らせる事、ちゃんとわかっているつもり。
だけれど そばにいたい
隣に歩いて 手を握って 一緒に歩きたい
だから、夕陽が落ちるのを遅く出来たらなって考えるんだ

「また今度逢えるだろう?」
「……っ」
「万丈目…」

下を向いて、唇を噛んだ。
そばにいたいんだよ 一秒でも長く
近くにいてよ 今が 一番大切だと思うから


「わかってる…」

悲しい。
夜なんか来ないでよ どっか行ってしまっていい
また一週間はあなたに逢えない。

オレは三沢の優しい顔を見つめた
夕陽のオレンジが顔を染める
髪の毛のツヤや、睫が橙色に染まっていた

「……万丈目?」

オレは自ら、握った手をはなした
それは三沢に 抱きつく為
ギュッと抱きついて 離れたくない

小さい溜め息が聞こえたあと、ゆっくり抱きしめ返してくれたから
オレはなんだか、悲しくなった

しばらく抱き合って、歩いて進めばオレの家が見えてきて
さよならの時間はすぐそこ。

握った手がだんだん緩くなっていった。

嫌だ行かないで
まだ、まだ…手を繋いでたいのに…。
一生のお別れじゃないのにこんなに辛い


「また来るから、な?」

そうだな、オレはあなたに尽くす為にここにいる
それと同じように 夕陽は夜を連れて来る為に存在する

だから また必ずここに来て オレを抱きしめて、キスをして
そしてまた手を繋いで ここから連れ出して




 

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リゼ