水槽

台風みたいだな、外は大雨。
豪雨が家を次々叩いて通ってく
そのせいで聞いてた音楽の音も聞こえなくなった。

「万丈目?」

気分が悪い、少し、吐き気がする
こんな雨じゃ小さな頃にした馬鹿な家出を思い出すよ




――ザァザァザァザァ雨は止まない。
それどころか小さなオレの頭に痛いほど、大粒の雨は当たって弾けた。

家族にかけられたプレッシャーで胸が圧迫されて、
投げられた言葉にプライドが折れそうで

オレはある日の豪雨の日、ただただ知らない独りぼっちの公園で雨に打たれていた。

無い物ねだりしていたつもりはないよ
なのに、何にしても才能のない自分や甘える事の下手くそな自分が嫌いだった

結局、いつまで待っても誰も迎えに来てはくれずにオレは熱が出てフラフラになって

倒れた

そこからあんまり覚えてない。
だけど次の朝目覚めた時には病院のベッドだった。

外では家族の楽しそうな笑い声の後に、母と父の溜め息が聞こえた。
ごめんなさい、と 幼かったオレは心で言った。

自分が悪い訳じゃない事も知らずに


「万丈目どうしたんだよ、さっきからボっとして」

でも、オレはお前に出会えたからよかったね

「何でも、ない…」

あからさまに固く、尖ってたオレを十代は優しくしてくれた。
だから救われた
初めて人に、一緒にいたい。と思った

だから、お前がこの手を離さずにいてくれるならオレは

ずっと、ずぅっとお前に着いて行くよ。

だって心に誓ったんだから
オレは嘘はつかないから

「十代、キスして…」

彼に寄り添い、甘えてみる。
十代は顔を赤くして、頷きキスをくれる

今の幸せをくれる為、沢山苦労をして来た と今なら言える気がする。

それでも雨は収まらないけど
本当は止んで欲しくないんだけど

これじゃ、お前の声がしっかり聞こえて来ないから
早く止んでよ

そして晴れたら 一緒に出掛けて 水たまりを、静かに踏もう。

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リゼ