蜘蛛の巣

もうそろそろ、俺も引き時…
積み上げてきたものは、すぐに崩れて行って他の者に先を抜かれる

それなら いっそ
トップにいる今、さっぱりと終わらせよう

「ん、ふぁ…」

彼が動く度にギチギチと縄が肉に食い込む音がする
それを快感にして甘い声を上げる奴を楽しむ

「ぁあ…っ、亮…!!」

彼が俺を“亮”と呼ぶのは俺が調教したからだ。
今の俺にカイザーなんて呼び名は似合わない。
俺はただ一人の男

「どうした、準?縄が気持ちいいのか?」

くいくいと縄を引きながら問えば、彼の口からくぐもった声が聞こえ、目から細い涙を流した

それは喜び、で 悲しみではない

「亮…っ、もう…欲し、い…」
「何が欲しいんだ?」
「り、りょう…のが、も…あ…っ」
「俺のが欲しい…?自惚れるな、今日はこの玩具で遊んでやると言っただろう」

柱に結びつけられ、身動きを封じられている為にただ言葉を発する事しか出来やしない
まるで蜘蛛の巣に絡まった蝶のよう。アナルに食い込む縄を上へと引っ張れば俺の名前を叫びながら白い液を吐き出した。

「早いな」

愛液を指で絡め取り、自分の口に運んだ。
苦味が喉を通る

「お願…い、もう…っ」
「欲しがりだな…、じゃあご主人様にしっかりとお願いしてみろ」
「んあ…お願い、します、準の…穴に、ご主人様の大きいの、下さ…い」

にやける自分の顔が憎らしい
悔しいけれど大好きだ
好きで好きで好きで、この手でぐしゃぐしゃに壊して動けなくなったお前をこの手に収めていたい
なんて、病んだ事考えてる

口にしようものならば、嫌われてしまうだろう。

「残念だが、まだやらない」

焦らして焦らして焦らして…どうしようもなくなった頃に御褒美を
それまで、綺麗な蝶には醜態を晒して頂こうか。

ローターを一つ取り出し、縄をずらし中へ入れた
頬を赤くし、快感に身を捩る
わざと弱にし、焦らす。

口から出た涎や、虚ろな瞳がいい
もっともっと、この手で壊したい…
それが俺の答え

それから何度も、彼はイッた
その姿を、声を感じる度 俺の体は深く熱くなっていった
「…そろそろ、お前の望むモノをやろうか?」

荒れた呼吸、赤くなった頬、熱を帯びた瞳
すべてをこちらへ向けて頷く

「じゃあちゃんとお願いしろ、御褒美を下さい、と」

なんで、こんな事を言ってしまったのだろう
名前を呼んで貰いたかったのだろう
俺はなんて…愚かなのだろう…。



「…ぁ、あ…早、く…入れて、下さい…十、代…っ」







…それが君の答えなんだな。
わかっていた
知っていた、最後。
彼から名前を呼んで貰おうだなんて考えてなければ、手に入ったのに
蜘蛛の巣に引っかかって身動きの取れなくなった哀れな蝶と
罠にかけ、隅で笑う蜘蛛でいられたのに…。

きっと溶けない悲しみ。

俺は大きな声を出して万丈目を殴った、何度も、何度も

大人しくなった所で中に大きくなった自分自身をいれ、大きく揺れた


鏡に映る自分の姿…とても惨め…。

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リゼ