海坊主/薬売り
 2020.03.13 Fri 02:52





海座頭は問う。
"お前の最も恐れるものは何だ"と。その問いに応えれば己の内にある恐怖の幻覚をみせられる。




『お前の最も恐れるものは何だ』



私が一番、恐いもの。それは私が一番よくわかっている。しかし、己が恐れている幻覚を見せられるとなると答えるのが恐く感じた。避けられぬことだとわかっていながら、息を吸い、心を落ち着かせる。



「……私が一番、恐れるものそれは…孤独。この世にただひとりになることが恐い…」



目を細め、呟くように答えれば瞬時に景色が変わる。私がただ、ひとりの静寂の中にいる。他に人は誰もいない。それが堪らなく寂しく、恐ろしく感じた。真っ白な場所は何もなく、すがり付くように辺りを見渡した。



「…、誰か、…誰かいないのっ…」



しばらく歩けば少し離れたところの床に散らばる何かがある。何かがある、ほっとして近付いてみればそれは人だった。無数の人の死体。辺り一面が全部死体。生きているのは私だけだ。
私、ひとりなんだ。



「…ぅ、ひとりは嫌っ…こわい、…いやだ、…」



崩れるように座り込み、頭を抱えて絶望して泣く私の肩にそっと何かが触れた。肩を包み込まれたみたい。



「**さん、貴女はひとりではない」



耳元で囁かれた落ち着く声で私は正気を取り戻した。見れば薬売りさんが私を後ろから支えていて、僅かに目を細めて微笑んだ気がした。



「…薬売り、さん…」



「…海座頭、問うがいい。」



凛とした声が響いた。真っ直ぐに海座頭を見る薬売りさんには恐いものなんてないように見えた。





(私が本当に恐ろしいことは…この世の果てには形も真も理もない世界がただ、あるということ、それを知るのが恐い)



◎リアルのメモからこっちに移しただけです。


[*前へ]  [#次へ]



戻る
[うみねこのなく頃に|北海道|配布]
リゼ