僕は魔法使いではないけれど
 2019.11.18 Mon 00:00

雲雀さんが夢主を好きだと気付いてから




ドサッ


もう、無意識に近かったと思う。自分でもどうして理性に歯止めが効かないのかわからない。気付いたら、なんて言ったら信じてもらえないと思うけど、本当に気付いたら**をソファーに押し倒していた。
**は当然、予想外の出来事に目をぱちくりするものの、すぐにいつもの笑顔に戻っていた。



「どうしたんです、恭弥くん?」


「……」


「あはは、恭弥くんは欲求不満ですか。お年頃ですねー」


「……欲求不満、じゃないよ」


「じゃあ、何が不満です?」


「……君が、僕が好きだと気付かない事が不満」


「……それって、恭弥くんが私を好きって事ですか」


「それ以外にどう捉えるの」


「……へぇ。恭弥くん、忘れてますか?」


「……」



一呼吸、置いて**は笑顔で言う。



「私、もう、死んでるんですよ」


「……もう、何も言わなくていい」


「残念ながら、例え私が恭弥くんを好きで両想いって言うんですか?……だとしても、決して結ばれる事はありません。現実的に私がずっとこの世界に留まる事は無理だから。」


「……知ってるよ」


「……じゃあ、そんな告白、無意味でしたね」


「無意味じゃない」


「どうして?」


「僕は君に僕が君を好きだと知ってほしいから伝えた。これは無意味なんかじゃない」


「……やめてください。恭弥くんは私を好きになったら自分が辛い思いをするとは自分で思わなかったんですか?」



**は自分の顔を手で覆って僕と会話を続ける。その声はいつしか震えた涙声になっていた。



「……それは君も同じだろ。違うかい?」


「知ってます…知ってました。だけど、いつの間にか…気付いたら……」


「僕もだよ」



**の手にそっと触れ、顔から手をどけた。
わかっていたけど、**は泣いていた。
なんて、愛しいんだろう。好きな人が僕を想って流してくれる涙はすごく綺麗だ。



「……っ、恭弥くんっ、すき、…好きですっ……」


「……うん。僕も、好き、だ…。触れられるのに、何で、君は……生きていないんだろう…」



ぽたり、ぽたり、と自分の頬を伝ってその雫は**の頬に落ちる。
僕も、泣いているのか。
どうしてこんなにも苦しく、胸が引き裂かれそうなんだ。恋という物はこんなに辛いものなのか。世の中の恋をする人々は何度もこんな思いをしながら恋をしてるのだろうか。



◎メモから発掘しました。こんなシーンをいれたかったけどあまりにシリアスっぽくてボツになったお話です。個人的には凄く好きな感じでした。



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