二人同窓会/白滝
 2019.09.30 Mon 18:13

 

白滝の後ろ姿をたまたま見掛けて
 



「あ!おーい!たっきざっわ〜!!」



大きい声で呼ばれ、驚いて振り返ればそこには昔見たひまわりのよう笑顔を浮かべる女が一人、ジャンプをしながら手を大きく振っていた。知らない顔ではない。学生時代の同級生でクラスメイトだった女だ。数年経った今こそ、大人びているが、昔の幼い笑顔がまだ残っていた。
しかし、今の俺は滝澤政道ではない。喰種になり、オウルなんて呼ばれて、人の肉を平気で喰らい、平気で人を殺すイカれ野郎だ。おまけに外見だって変わり果てて、今の俺はあの頃の俺とは全く違うはずなのに。

何で…?何でだ…?
名前を呼ばれても近付いていいのかわからない。
どんな反応をすればいいのか。

…無視をして立ち去ればいい。それがきっと今の俺にとっての正しい選択だ。



「……」


「ねえっ!無視しないでよ!同級生の***だよ!あんた、滝澤でしょう?」



それなのに、こんな俺に臆すること等なく、嬉しそうに笑みを浮かべ、走って俺に近付いてくるこの女。……めちゃくちゃ変な奴だったのは覚えてるが、ここまでだったっけか?



「……お前、俺が見えてるのかよ?」


「……はあ?何、あんたオバケにでもなっちゃったの!?実は死んでるの!?」


「……いや、…死んでは、ないけど…」


「なんだー!良かった!私、急に霊感芽生えちゃったのかと思った!」



楽しそうに笑う女に俺は拍子抜けするばかり。



「いやー、久しぶり!滝澤は元気だった?今は何の仕事してんの?結婚は?」



あれこれ、一辺に聞かれても答えられる訳がない。コイツのどんな普通の質問も、今の俺にとっては嫌がらせのように聞こえた。普通の生活が出来ていれば、どれも簡単に答えられる質問なのに。
元気な訳ねぇし。
喰種捜査官やってたけど、殺されたと思ったら実験台にされて喰種にされて。
結婚なんて…。普通に生きる資格すら奪われてるけど?笑えるだろ?なんて。



「……」


「……うまく、いってないのか。そうだよね。人生長いし、そういうこともあるよね」



俺の無言で察したのか、困ったように笑う女。
察したなんて言っても、どうせ無職になったとか、結婚相手がいないとか、そんなありきたりの不幸せしか想像されてねぇんだろうな。勿論、想像出来る訳もないんだけど。



「…お前は?」


「…んー、私も自分から聞いといて何だが、一昨日、ニートになった!結婚相手も、勿論、いない!元気ではあるけど!」



よくそんな状況でそんな晴れやかな笑顔が出来るな、なんて内心、呆れる。



「でもさ、滝澤に会えて良かった!ずっと、会えないかな、って思ってたんだよね。だから、それだけで何か全部、どうでもよくなっちゃった!」


「……何だよ、それ…」


「ねぇ、そんな辛気臭い顔なんてしてないでさ、折角だし、これから飲みに行かない?同窓会ってことで」


「…俺、これから仕事だし」


「ええー!滝澤もニートじゃないの!?いかにもそんな雰囲気だったのに裏切られた!」


「うるせーよ、ニート。一緒にすんな、ニート。仕事探せニート」


「ちょっ、ニートニートうるさいよ!もう!明日から探すの!滝澤も無理すんなよ?」



さっと、行こうとする俺にそれから、これ。なんて女は俺の手に何かを握らせた。見れば折り畳まれた小さな紙だ。



「何だよ、これ」


「…何かあったらそこに連絡して!何でも聞くし、また今度飲みに行こう!」


「……」



まさか、連絡先を渡されるなんて思ってなくて驚いていると、これから仕事なんでしょ?なんて急かされた。可笑しくなって少しだけ笑った後、思い出したように慌てて女にひとつだけ聞きたかったことを聞く。



「おい、***。…お前、何で俺がわかったんだ?…こんな、見た目なのに…」



俺が聞くと女は楽しそうに笑った。



「何言ってるの。そのダサダサの髪型の人なんて世界中で滝澤くらいしかいないから後ろ姿ですぐわかったよ!」


「はあ!?ダサダサって!?つか、世界中は言い過ぎだろ!」



俺が必死に突っ込みをしている間に女は笑いながら手を振り、遠くなっていく。その距離で夕陽を背にして女は叫んだ。



「私ねー!高校の頃、滝澤のこと、好きだったんだーー!!!」



それだけ叫ぶと女は夕陽に向かって消えて行った。
自由すぎんだろ。

だけど、少しだけ気分が良かった。
あの変な女に出会えた今日はいつもより、楽しいと思えた。






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