横顔
真っ直ぐにどこかを見つめる、その横顔を見るのが好きだった。
近くで見たらそれだけ愛情は高まるよ。
「どうした幸村」
「いや…」
「そうか…?」
さっきから視線を感じていたのだろう。
テニスコートを見つめる、君の隣にいて横顔を見ている。
一番幸せで一番切ない。
俺は…。
部活が終わって、次の試合練習の作戦を真田と2人で練っていた。
空は秋、もう暗い。
「真田そろそろ帰ろうよ」
「ああ、そうだな」
荷物をまとめて鞄を持った。
先に出ようとする真田の背中を見て思った
「ねぇ真田…俺たち、いつまでこうしていられるの…?」
「…え?」
好きで好きで…急に切なくなるから…
「ごめん…。」
「……」
黙り込んだ2人の間に、開けたドアから侵入した風が吹き抜ける。
そして優しく頬を撫でた。
「さ、帰ろうか」
「ああ…」
俺は一緒にいられなくなる“いつか”が来るまで君だけを見つめつづけたいよ…
だけどそんな健気な願いは風と一緒に飛んで行く
悲しい物だね…
「 。」
低い音に耳が痛くなり起きた。
君と二人、畦道を歩く夢を見ていた。
夢の中でもやっぱり君の横顔は綺麗で輝いていた。だから切ない。
いつまで?ねぇ、いつまで二人は友達のままいられるのだろう…
そんな事思って、勝手に流れ出す涙は透明。
卒業式の日が来て、高校に上がった。
当然のようにまだ一緒にいれる、と 思っていた。
「転、校……?」
「…………」
俺は悲しくて、認めたくなくて
ただ、ひもじい。
どうか君が遠くに行ってしまう前に…悲しい恋を演じさせて…。
君はあっさりいなくなった。俺を残して消えてしまった。
そしてある年の夏休み、君が近くに来るって言うから俺はね…出来る限りのおしゃれをして、君が来るのを待ってみた。
「久しぶり…真田」
「ああ…変わってないな、幸村」
なんてなんの変哲もない久しぶりに逢った友人との会話
胸が一杯。
話したい事は沢山あるから、まずは言いたい事から貢ぐ。
「あのね真田、俺…」
「?」
「遠く離れてても、やっぱり…君が好きだよ」
ほら、また柔らかい風。
暖かいでしょ。
あの日二人の間をすり抜けて行った風も、君と一緒に戻って来たのかな…
だとしたら、おかえり。
君の横顔、今度もまたずっと…ずうっと綺麗になったね…。
(2010/09/13)
戻る