死刑囚
…どうして人は死んじゃうの?
幼い頃、お前が呟いた。
その答えを今、見出した。
「貞治、何故人は死ぬか聞いた小さい頃を覚えてるか?」
「…え」
お前は戸惑う。
覚えていないのか…
俺はお前といた時の記憶を全て覚えているのに
「すまん…忘れていたようだ。」
「そうみたいだな」
一息ついて、お前は言った
「お前は答えを見つける事が出来たのか?」
「…自分なりにな」
「そうか」
なんだか最近会話が続かなくて嫌になる。
話したい事は沢山あるはずなのに
「感情って突然湧いて来るんだな」
きっとそれはデータでも分析しても出ない答え。
今俺はお前に痛いくらい抱きしめて欲しい。
「…?」
「たまにはいきなり抱きしめてみたらどうだ?俺の事、何も考えないで」
「いいのか?」
「ダメな事は口になどしないだろう」
「あ、ああ」
だけど見抜ける。取りすぎたお前のデータ。
照れた時髪を触る。耳の色、赤くなってく。「…ん」
キスをするといつも思う。
思いの外柔らかいお前の唇は誰を守る為にあるのかと
その答えはきっと変わっていくから分からない。
行為が終わって隣同士になってベッドに顔を埋めたら感じる焦燥感。
仰向けに寝るお前のメガネをそっと取れるのは俺の特権。
――ス…
「あ…」
「貞治…」
露わになった瞳を見つめる。
…綺麗だ。
純粋な瞳に恋をした。いつまでも愛してる。
「貞治、お前は罪を犯した事はあるか?」
「え?…心あたりはないな。」
「……」
心あたりは皆ないが、実際には知らないうちに沢山の罪を犯している。
例えば小さい頃、小さい蟻を指でわざと潰してみたり
好きな女の子をいじめて傷つけてみたり
下らない事に反発して親を悲しませたり
そういう小さな小さな罪が重なって、知らず知らずに貯まってく。
そしてある一定空間を超えた時、人間は神に罰を与えられる。
「―――そして最後の罪は……、貞治…寝たのか。」
最後の罪は、愛する者達を哀しませてしまう
造られた死。「だから人間は年を老いて、多少周りに邪魔にされながら生きて沢山迷惑をかけて死んでくのが一番の理想。」
そうすれば、悲しみが和らぐから…。
…もうじき5時を告げるチャイムが鳴る夕暮れ。
「…どうして人は死んじゃうの?」
「それは……。」
幼い頃、お前が呟いた。
その答えを今、見出した。
「それは?」
「……ふ」
小さい俺が笑う。
「その答えは、また未来で話そう貞治。」
「あ…蓮二っ」
「じゃあ、帰る」
それから俺が引っ越してしまって結局この話は着かずに終わった。
「人間は遅かれ早かれ神に罰っせられる死刑囚。ただ、それじゃあ…」
今、目の前に積まれた道をゆっくり歩いて行くだけ。
(2010/09/03)
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