漆黒の朝焼け

白い朝はなにもかもを白々しく装い、俺の心のモヤさえもなくして行く。

今日も着信履歴もメールにも君の名前は残ってない。
自分から?
自分から電話やメールをするのは少し気が引ける。
だってなんだか負けた気がするから。

きっと彼はなんにも思ってないんだろう。
本当に好きなら学校をサボってでも一緒にいたいと思うもの。
それなのに君は、俺が誘っても来ようともしないなんて…。

遠くの俺より近くにいる人の方がいいの?

心は張り裂けそうだよ。

「…精市」
「なに」
「最近イライラしてる様だが…大丈夫か?」
「ああ」

大丈夫だけど、大丈夫じゃないよ。
逢えない切なさは君もよく知っているだろう。

「蓮二は嫌じゃないの?好きな人に好きな時に逢えなくて。」
「……ああ」
「……。」
「心が繋がっているからな。」
「…そう。」

なんだかムシャクシャする。
頭がどうにかなりそうだ。











朝起きるのが辛かった。
朝が漆黒で、他の何色にも染まらなきゃいいのに。
夜も昼も朝も全てが真っ暗。

全てが見えない、声も聞こえない。
隣に誰がいても分からないようになればいい。
そうすれば君が隣にいてもいなくても分からないんだから、もう悲しまない。

だからそっと目を閉じた。

このまま時が過ぎて、しばらくすれば宙に浮いて何も感じない時が来る。
ああ、時間は止まる。
俺の中だけで。

そして我に帰って学校へ。

今日も憂鬱。
目が真っ暗に閉ざされていたら、きっと…

全てが辛い。

携帯をチラッと見たら着信が入ってる。
休み時間を待って携帯を開いた。

【越前リョーマ】

の名前。
慌てて電話をかけ直す。


『もしもし?』
「越前くん…さっき…。」
『ああ、アンタの為に学校休んで来たから』
「え…?」
『早く抜け出してくれない?』

窓から下を見る。

「あ…」

確かに君がいる。電話も切らないまま駆け走る廊下。

「越前くん!」
「遅い」
「…ごめん」

ちょっと生意気、だけどわざわざ来てくれた。
期待してなかった分嬉しい、大好きだ。

「……寝てそのまま学校行ったでしょ?」
「え、うん」
「…せっかく綺麗な顔なんだから、もっと気使いなよ」

小さい手が俺の頬を触る。

「…ボウヤ」

それだけで嬉しくて胸が苦しいよ。
張り裂けてしまいそう
鳴り止まない心臓の音がうるさいよ…。
もう少し静かにしてくれないと、君に聞こえてしまいそう。

それからただ公園で二人で喋ってた。
時間は早く過ぎて行く。

隣にいれる事、それが嬉しい。


すぐに夜が来た。
眠りに就いて朝がくる

白い朝はなにもかもを白々しく装う
昨日の幸せもその時限りって事。

だから人は幸せを何度も掴みたくて夢見てる。

(2010/08/30)

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