ファーストキス
それは偶然の出来事……
いつものように追いかける静雄から臨美が逃げていた。
だがその日はいつもと違い臨美が廊下で転倒し、静雄も芋づる式に転けてしまい臨美にのしかかる形で倒れてしまったのがいけなかったのだ。
起きあがろうと顔を上げた臨美と倒れた静雄の口唇が運悪く重なってしまっただった。
2人はしばらく固まっていたが、臨美は瞳に涙を浮かべるとシズちゃんなんか大嫌い!と言い放ち走って行ってしまったのだ。
「いってぇ………」
「一応謝っときなよ?」
新羅が叩かれた頬を見て苦笑している。
「何で俺が………」
「臨美あれファーストキスだったんじゃないかな?アイツあれで結構そういうとこは女の子だからね……」
いや…俺だって初めてだぞと静雄は頭を抱えるが臨美の泣き顔に何だか罪悪感が湧き、とりあえず臨美を探しに立ち上がった。
「最低……初めてだったのにシズちゃんなんかと……」
ファーストキスを静雄としてしまったこともだが、それを角田に見られたのはもっとショックだったのだ。
付き合いはじめたばかりでまだだったのに……
臨美は蛇口を捻ると口唇を濯ぎゴシゴシと擦る。口唇の感触が取れないような気がしてたまらないのだ。
「もう止めとけよ。口唇切れるぞ?」
「ドタチン……」
肩を叩かれ振り向くと門田が苦笑しながら立っていて、門田の顔を見た瞬間更に涙が溢れてしまい、門田がそれをハンカチで拭う。
「ほら……もう泣くなって?あんなの事故だしよ………」
「だって!ファーストキスドタチンとがよかったのに……シズちゃんとだなんて……シズちゃんの感触消えないんだもん………」
涙を拭いながらグスグスとしゃくりあげる臨美の頭を黙って撫でていた門田だが、ハンカチを仕舞うと両手で臨美の頬に触れた。
「ドタチン……?」
「んなの忘れさせてやるよ……」
「え?……んっ!はぁ……」
顔が近付いてきたかと思えば門田の口唇が自分のに重なっていて臨美は目を見開いた。
ドタチンとキスしてる?驚きで固まってしまうと口唇が離された。
「ドタチン……今の……!」
「静雄のなんか忘れたろ?」
「うん!もう一回…キスして!!」
「しょうがねえな……」
さっきまでは打って変わり嬉しそうな笑みを浮かべる臨美に門田も釣られて笑うと、臨美を抱き寄せ再び口唇を重ねた。
「何だよ……アイツ門田とならあんな顔すんのかよ……」
2人のやり取りを途中から見ていた静雄は壁に凭れながら舌打ちをする。
門田にキスされて笑顔になった臨美に胸が痛むのは何故なのだろうか……
静雄はそれに気づかないまま口唇に触れた。
だいぶ過ぎたけどキスの日ネタです
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