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静雄と臨美の出会いは4月の赴任してきて数日した頃だった。
人気のない廊下を歩いていた時不良達に囲まれてしまったのだ。
「折原先生って美人だよね。」
「彼氏とかいるの?」
「あ……あの。あなた達教室戻りなさい?」
長身でガタイのいい男子生徒達に囲まれて臨美はガタガタと震えそうなのを必死に堪える。
臨美は女子校育ちで男慣れしていなかったのでこんな状況にいきなり立たされパニックを起こしそうになり涙目になってしまう。
「先生可愛いー!俺ら怖くないよ?」
「先生始業式から可愛いって思ってたんだよなぁ。俺らと付き合おうぜ?」
「な…何言ってるの?いい加減離して!……きゃあっ!いやっ…」
臨美の後ろにいた男子生徒が後ろから手を回し臨美の胸を揉み始め、それに続くように脚や尻も撫でられ臨美は嫌々と首を振るが男子生徒達はその反応に余計興奮するのかエスカレートしていく。
「先生のおっぱい柔らけぇ……」
「尻もいい形してんよなぁ……」
「いやぁぁ…お願いやめて…誰かぁぁ!!」
自分の身体を弄る手や男子生徒達のハアハアと荒い息にガタガタと震え小さく叫んだ瞬間、ガッと音がし男子生徒の1人が倒れるのが見え、顔を上げると日に透けた綺麗な金髪が目に入り臨美は思わず見惚れた。
(綺麗な金髪…お日様みたい……)
気付けば男子生徒達は皆床に倒れていてほっとして腰が抜けていた臨美に金髪の男子生徒は近寄ってきた。
「大丈夫ですか?」
「う…うん。ほっとしたら腰抜けちゃったの……」
「そうスか?じゃあ俺運ぶんで保健室でいいですか?」
「え……ありがとう。」
軽々と自分を抱き上げると金髪の彼は保健室に向かって歩き出し、臨美はその姿に見惚れた。
(綺麗な顔……それに格好いいし王子様みたい。)
そんなことを考えていれば着きましたよと声をかけられ保健室に入り椅子に座らされた。
「気を付けた方がいいスよ。ここの男子ああいうの多いし先生若くて美人だから。」
「うん、気を付ける。あ!ほっぺケガしてる。治療するから座って!!」
「いや…これくらい……」
「いいから!!」
「は…はいっス。」
それから治療しながら話をし金髪の彼は平和島静雄という名前だとわかり、じゃあシズちゃんて呼ぶねと言うとそれはやめて下さいと苦笑されたのだった。
シズちゃんは喧嘩人形と呼ばれていて生徒や他の教師には怖がられているらしかったが臨美にはそんな風には見えなかった。
普通に話す臨美に先生俺が怖くないんですか?と聞かれたけれどシズちゃんは優しいし怖くないよと首を横に振った。
それから静雄は毎日のように保健室に訪れるようになった。昼休みには一緒にご飯を食べるのだ。
先生の弁当美味そうとキラキラした瞳で見てくるシズちゃんにキュンとしてじゃあシズちゃんの分も作って来ようか?と気付けば口走っていてそれからは毎日弁当を静雄の分まで作っている。
毎朝シズちゃん今日も美味しいって言ってくれるかなとドキドキしながら作っているなんて内緒だけれど。
でもやっぱりマズいよね…先生が生徒を好きになるなんて……
私6つも年上だしシズちゃんとは釣り合わないよね……
だからシズちゃんに彼女ができるまではこのままでいたいなあ。
臨美は今日も弁当を持って静雄が来るのを待っていた。
「先生!遅くなってすみません。」
ドアが勢いよく開き静雄が駆け込んで来る。
急いでいたのだろう。額に汗が浮かんでいる。
「シズちゃん汗掻いてる。」
「あ…すいません。」
ハンカチで汗を拭いてやれば静雄は照れ臭そうに笑う。
「じゃあお弁当食べようか。」
「あ…先生今日はいらねえんです……」
「え……そのお弁当。」
静雄が手にしている弁当を見て臨美が固まると気まずそうに静雄は切り出す。
「昨日痴漢に遭ってる一年助けたらお礼したいって言われて……その。」
ああ…なんだ。その子シズちゃんが好きなんだ……
何だか胸がグチャグチャで苦しかった……
「先生?」
「良かったねシズちゃん!明日からその子にお弁当作ってもらえばいいじゃない。」
「何言って…これは今日だけで。」
「良かったね!シズちゃんの良さに気づいてくれる女の子がいてさ。せっかくだし付き合いなよ?」
「だから…違うって言ってんだろ!?」
バンと机を叩けば先生はビクッと固まっていて、ああ…怖がらせちまったんだなと後悔する。
「なあ、先生…もしかして妬いたのか?」
「そっ…そんなわけないでしょ!?シズちゃんがいつも来るから仕方なく相手してあげてただけだし、迷惑だからもう来ないで!!」
「そうですか…わかりました。」
静雄は俯いたまま保健室を出て行き臨美は涙を零した。
私何やってるんだろう…でも私みたいなおばさんより同じ高校生の方がいいに決まっている……
臨美の啜り泣く声が保健室に響いた……
きっかけは不良に絡まれて襲われそうになっていたのを助けたことだった。
怯えている先生を見て気付けば身体が動いていた。
不良どもを倒してしまえば安心して腰を抜かしたのか座り込んでしまっていて、そんな所が年上に見えなくて可愛いと思った。
自分のことをシズちゃんと呼び、お弁当まで作ってくれて期待していたのにそれは自分だけだったのだろうか…
しかし臨美のことが心配だった。臨美は若くて綺麗でこの間のように不良達が折原先生ヤりてぇよなと言っているのをよく聞いたからだ。
静雄が毎日のように保健室に行くのは臨美に会いたいだけではなく不良が臨美に近寄らないようにするためだった。
喧嘩人形の自分が側にいれば不良も恐れて近寄らないのだ…
後輩の女といてもそのことばかりで頭の中は臨美でいっぱいだった…
やっぱり臨美が好きだ。
「最近平和島のヤツよ、折原先生のとこいねえよな…」
「じゃあ今がチャンスじゃね?」
トイレに行こうとする静雄の耳に入って来たのは不良達がそう話す声だった。
そんなことはさせるかと静雄は眉を寄せた。
「はあ…シズちゃんに会いたいなあ。」
自分から来るなと言ったのにこんなに寂しいなんて……
こっそり顔を見たいけどほとんど保健室から出ない自分はなかなか静雄と遭遇しないのだ…
「馬鹿だなぁ…私……シズちゃんに嫌われちゃったよね。」
そう呟いた瞬間人の気配がし思わず振り向く。
「シズちゃん!?……あ。」
「折原先生平和島じゃないよぉ……?」
「っ………。」
「平和島と勘違いした?折原先生最近平和島といないよね?」
「関係ないでしょう!?早く帰りなさい……」
よく見るとこの男子生徒達はこの間自分を襲おうとした生徒達だったと気づき臨美はゾクっと身体に寒気が走る。
「帰るわけないじゃん。せっかくチャンスなのによ。」
「ち…チャンスって?」
いつの間にかベッドの方に追いつめられていて臨美は焦る。そしてベッドにぶつかるとそのまま押し倒され押さえつけられる。
「いやっ!何するの……どいて!!」
「何ってわかるだろ?今から先生のことマワすんだよ。」
「先生楽しませてよ?」
ゲラゲラと下品に笑う男子生徒達に臨美は真っ青になる。
「いやっ!誰か助けて……」
「無駄無駄誰も来ねえよ…ほら先生脱ぎ脱ぎしましょうね?」
服をビリビリと裂かれ肌が露わになると男子生徒達は身体をいやらしい手で触る。
「ひっ…やだ!ふぁ……あ…そんなのやめてぇ!!」
脚を開かされ固定されるとそこに視線が集中し羞恥でいっぱいになる。
「おい…もう挿れちまおうぜ…」
「そうだな。先生のまんこいただきます!」
「やだっ……お願いだから……いやぁぁ!!」
秘所に熱いモノが押し当てられ臨美は泣き叫ぶ。
やだよ…私初めてなのに……シズちゃんシズちゃん!!
絶望でギュッと目を閉じた臨美だが衝撃を感じずに目を開ければ男子生徒が倒れていた。
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