気まぐれな黒猫
四木甘前提赤甘


ふんふんふんと楽しそうに鼻歌を歌いながら長い黒髪を靡かせて、粟楠会の事務所のドアが開けられる。



「失礼しまぁす。四木さん報告書持って来ましたよぉ!あれぇ、四木さんいないんですかぁ?」


いつものように粟楠会の事務所にやってきた甘楽だが、事務所は静まり返って誰もいない様子で首を傾げれば、声をかけられて甘楽は振り向いた。


「甘楽ちゃんじゃないかぃ。四木の旦那なら今席を外してていないよぉ?もう少しかかるんじゃないかなあ……」


コーヒーを飲みながら赤林は甘楽に話しかける。



「赤林さん。そうなんですかぁ…?四木さん早く来てほしいですぅ……」


赤林の言葉に甘楽はシュンとしてしまえば、赤林は甘楽の頭を撫でてやる。



「まあまあ。待ってればいいだろう?ほら、座りなよ。ケーキあるし好きなの食べていいからさ?」
赤林は甘楽をソファに座らせるとケーキの箱を指差す。


「ケーキですかぁ!?甘楽お腹空いてたんですよぉ。赤林さんありがとうございますぅ!!」


ケーキと聞いて浮かない顔が一瞬で笑顔に変わり、赤林も釣られて笑う。
本当に表情がくるくる変わるなあと赤林は甘楽を見つめる。

「ふんふん〜。甘楽チョコケーキ頂きますねぇ?」


「どうぞどうぞ。」

「頂きまぁす!ん!美味しいですぅ!!

「良かったねぇ。甘楽ちゃんお茶煎れてくるから待っててね?」


「ありがとうございますぅ!」


赤林の言葉に甘楽はケーキを頬張りながら返事をした。



「あれ、甘楽ちゃん寝ちゃったみたいだねぇ?」


赤林がお茶を煎れて運んでくれば、甘楽はソファで丸くなり、スヤスヤと気持ちのいい寝息を立てていた。
丸まる姿はまるで猫みたいだと赤林は思う。
くるくると変わる表情、甘い声、しなやかな身のこなし、気まぐれな態度が黒猫を彷彿とさせる。


「ん……四木さぁん……」


「そんなに四木の旦那がいいかねぇ……」


甘楽が寝言で漏らした「四木」の名に赤林は眉を寄せた。
そして、甘楽に覆い被さると口唇を重ねた。
軽く触れるだけのキスを交わし顔を離せば、甘楽は目を開けて赤林を見上げた。

「甘楽ちゃん起きてたんだねぇ?」


赤林はもう一度口唇を重ねると今度は舌を絡めた深いものを交わせば、甘楽は舌に応えて唾液が口を汚した。
抵抗しない甘楽に赤林がスカートの中に手を差し込めば、首にナイフが突き立てられて赤林は目を見開く。


「赤林さん、ごめんなさぁい。甘楽エッチは好きな人としかしないんですぅ!」

そう呟くと甘楽はニッコリと笑い、赤林は溜息をつく。


「そんなに四木の旦那がいいのかぃ?」

「ふふ、赤林さんも大好きですけどぉ、甘楽は四木さんの飼い猫なんですよぉ?」

甘楽は嬉しそうに呟くとドアの方に目をやる。


「四木さん帰ってきたみたいですねぇ!」



そう言いながら満面の笑みでドアの方に向かう甘楽を見ながら、やっぱり黒猫みたいだねぇ?と赤林は呟いた…


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