愛されて、臓

─これでは甲斐に戻ったら─






  されて、






「逢いたかったぜ、真田幸村」
「長曾我部殿…」
「嗚呼…この匂いだ。このお天道様の匂い」
「く、苦しいでござる…」

出会い頭に力一杯幸村を抱きしめてくる元親。クンクンと匂いを嗅ぐ姿は犬の様。鬼が犬、とは笑ってしまいそうになった幸村は、元親にも同じ事を云おうとどんな香りかを考えた。

「ち、長曽我部殿は…潮風と太陽の香りが――わっ!」
「おっと。大丈夫か?揺れには気を付けろよ。それより富嶽からの眺めは格別だぜ?」
「すまぬ…」
「可愛い野郎共が丹精込めて作ったこの富嶽─「うわっ」
「もっと色気を奏でて声出してくれねぇか?」
「仕方無いでござろう。某、男故」
「夜はあんな可愛い声上げて俺を虜にするのに?」
「っ!!?///」

後ろから抱き締めて耳元で囁けば、幸村は顔が真っ赤になる。

「こうすれば、船の揺れもマシだろ?土佐に着くまで俺がこうしてやっから少しは可愛い声出して癒してくれね?」
「…長曾我部殿、兵達が見ております…」
「良いんだよ。甲斐のオッサンも公認なんだろ?」
「は?何故、親方様の名が出て来るので?」
「だって、こうして幸を使いに出してくれるってのはそう云う意味じゃねぇの?」
「は、破廉恥なっ」
「なぁ、早く嫁に来てくれよ。野郎共も歓迎するって張り切ってんだ。甲斐のオッサンに嫁にくれって書状出そうかなぁ
「そうしましょう、アニキ!!」
「なっ」
「云ったろ?こちとら、何時だって幸を嫁に迎える支度整ってんだ」
「どうしたら、その様な話の流れになるのでありましょうか?」

困惑している幸村に兵達は追い討ちの様な言葉を掛ける。

「今晩、床を同じにして、既成事実作っちまいやしょう。今から書状書いて早馬出せば、明日にでも甲斐に届く筈。明日には祝言あげて、甲斐に行ったら正式な祝言をして、それから…」
「あー。分かった分かった。早まるのは良いが、まず、準備が必要だ。書状…そうだ書状!只一言。『真田幸村を長曾我部元親に下さい』って。直球だが、甲斐のオッサンは受け入れてくれるだろう」
「お、落ち着いて下さ…「おー野郎共ぉ、さっそく書状と祝言の支度だー!!」
『『おおおー!!!!』』
「心配すんな幸、こっちの祝言は形だけだ。酒交わして、ドンチャン騒ぎするだけ」
「いや、その事では無く…「奥方ぁ、魚はどれも食べれますかぁ?」
「あの、魚はどれも食べられますが…「だってよぉ!早速活きの良い魚釣るぞー!!」
『おお!!』
「あの、話を…」
「俺達は晩を楽しもうぜ?」
「///…承知…


既に幸村の言葉はどれも遮られ、行き場を無くす。元親の言葉にぎこちなく頷き、困惑する。

「(嗚呼、親方様…どうかお断り下され…どうか、どうか…)」

幸村の心の叫びは信玄に届くのだろうか?




     




 ─翌日─

「…ほぉ。西海の鬼が遂に動きよったか」
「!まさか、甲斐を攻めると?」
「いや。幸村を嫁に寄越せ。と書いてある」
「それは何よりって、ぇえ?旦那を?」
「何を驚いておる佐助。以前から知れた事。遅かれ早かれこうなる時は分かっておったわ」
「…はぁ」
「喜ばしいではないか。のぉ?」
「…左様に御座います。では祝言の支度を」
「うむ。長曾我部に、相分かったと書状を。甲斐も急ぎ、祝言の準備じゃ。盛大に行うぞ佐助」
「はっ」



こうして土佐、甲斐と互いに祝言の準備を整え始める。





 −甲斐に戻ったら、真の夫婦になってしまう。戻りたいが戻りたくない−








終。

2010*10*20
-umi-
初、親幸*.゚・(・v・)・゚.*
最初は少しシリアスめの予定でしたが、何故かギャグ風な話に***
取り敢えず、長曾我部達が一番楽しんでる風に書けたので、一応良しとします(私的に)
男同士では祝言は出来ないと、誰も突っ込みがありません。
何故なら、信玄も長曾我部家臣達も公認の仲なので。
佐助は何か云いたそうな感じだけど。
これからもBASARA作品増やしていきたいです。
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リゼ