それは薔薇の花びらの裏へ



─偽れない。僕の目では。君の記憶が正しいかなんて今では判別しようがない。どれが"切られる"前の記憶かなんて君は次第に忘れてしまう。所詮、記憶など曖昧はモノに過ぎないのだから。そうだろう?普段通り過ごしていても数年前の記憶は色褪せて逝く。だから、記憶など信用しない方が良い。例え、作り変えられた記憶だとしても今を生きて過ごして行ければそれで良いのだと、僕は思う。そうすれば君を独り占め出来るし、作られた記憶も直に本物へと変貌していくだろう─














「気分はどうだい?」

月島と戦闘を前に、突然視界が暗闇になったかと思えば、意識が薄れていった。気付くと見知らぬ場所。見知らぬ部屋。見知らぬベッドの上に寝ていた。

「ん…」
「黒崎一護」
「!こ、此処は?」
「僕の部屋だよ」

頭がガンガンする。殴られた訳でもないのに。

「喉が渇いているだろう?今、水を持ってくるから」
「待て」
「何?」
「何って。俺をこんな所へ連れて来てどうするつもりだよ?」

扉に手を掛けた男は少年の言葉を無視し、キッチンへと向かった。

 ─ガチャ─


「逃げなかったんだ」

おぼんにティーカップに乗せたも飲み物が運ばれてきた。少年は律儀にそれを受け取る。香りを嗅いでみると、どうやら中身は紅茶のようだった。種類までは判別出来なかったので、試しに一口啜る。

「逃げる前にお前には聞きたい事がある」
「この紅茶、僕のお気に入りなんだ」

男も紅茶を手に取り、角砂糖と二個、ミルクをたっぷりと入れる。スプーンでクルクルを掻き混ぜ少年と同じ様に一口啜った。

「何で俺をこんな所へ連れてきた?」
「他にも様々な味があるんだ。これはミントだけど、苺やオレンジとかね」
「理由は何だ」
「二杯目は何が良いかな?」

少年は一気に紅茶を飲み干し、男の胸倉を掴む。男の紅茶が少し床に零れた。

「乱暴だなぁ。紅茶が零れちゃったじゃないか」
「てめぇが人の話を聞かないからだろ」
「僕は君の質問に答えると思う?」
「はぁ?」
「そんな不毛な会話よりもっと有意義な会話をしようよ」

「最後まで飲みたかったんだけど」と呆れた表情でティーカップを机に置く。

「君は本を読んだ事はある?」

胸倉を掴まれた少年の手を取り、掌を自分に向かせる。

「綺麗な手だ。指も長く傷も少ない。でも喧嘩は時々するって手だ」
「離せよ」
「先に触れてきたのは君じゃなか。だから僕は触っている。離して欲しければ元から僕に触れなければ良い話だ」

手を引っ込めようにも逆にグイと引っ張られて、男の身体にダイブする。

「うわっ」
「このまま君を屈服させる事が出来たらどんなに楽しいだろうね」
「おい」

肩を掴み、乱暴に少年をベッドに沈ませ男は覆い被さる。

「何のつもりだ!!」
「何のつもりだと思う?」
「答えになってない」
「答えるつもりはない。どんな本を読むんだっけ?」
「漫画とかは読んだりはするけど」
「違うよ。小説さ」
「小せ…?ぁう…」

男は少年の首に舌を這わせる。温かい少年の首は、先程の紅茶の味がするのではなかと思う錯覚がした。どれは口から紅茶の吐息がしたからであって、それに近い首にもその香りが染み付いてもおかしくはないだろう。はたまた、男の舌にも自身が飲んだ甘い甘い紅茶の余韻が残っていたのだろうか。

「歴史上の著名人」
「読まない…」
「駄目だよ、読まなきゃ。沢山の知識の宝庫なんだから」
「あぁ…」
「敏感なんだ?」
「違、」

「可哀想に。僕なんかに目を付けられて」

少年と目を合わせた男の唇が重なる。キスをされた。少年は一秒でも早く唇を離そうともがくが、男に頭をホールドされ、じたばたするしかなかった。

「ふ…んん…」
「本当は何もしないで監禁だけの予定だったんだけど。君の反応を見ていたら、それ以上の事をしたくなっちゃった」
「やぁ、」
「組み敷かれて構わないって顔してる」
「、んな顔してない…」
「大丈夫。優しく記憶を作り変えてあげるから」
「…」

いつの間にか手にしていた刀が少年の目前で振り翳(かざ)される。反射的に目をつぶり、目を開けると何も痛みは無く、身体には傷一つなかった。男の能力を少年はまだ分かっていない。少年の耳に入るにはまだ少年の周りの人間が黙っていた。その者達は"もっと明らかになってから"、と思っていたので、この時点で少年の耳に入っていれば、違う結果になっていたかもしれない。だが、少年は男の魔手に落ちた。

「月島さん」
「何だい?」

少年の表情が穏やかになっていくのが分かる。そしえ男の表情も声も少年に答える様に優しくなる。

「俺」
「一護」
「アンタに抱かれたい…」
「喜んで」









END.
2011*12*18
-umi-
数年振りのBLEACHネタです。新章を読んでる内に一護受けが戻ってきた様で。月島×一護美味しいですね





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