The sky which it is fragrant, and dances.

   

オフなので街に出て目的の無い散歩をしてみようと思い立った。
昨夜は中々犯人確保ならず、日付を変わってもなお犯人探しに走り回った。
お陰で足が浮腫んでパンパンだ。
だから、オフな日はのんびり趣味の物の手入れに没頭したったのだが、目覚めがやけに良かったので外出に決めてしまった。
切らしていた日用品等の買い出しも兼ねて、適当に散歩しながら一日を潰すのも良いのかもしれない。
素顔ではヒーローとして声を掛けられる事も無いので、普段通りの服装に髪型の恰好。
最近、前髪が邪魔に思えてきた。
自分で切るイワンは、そろそろ切る時期かな?と頭の片隅で考えながら、買い物リストをメモに纏める。

玄関の鍵を閉め、買い物へ。
平日の街は少しばかり人が少ない。
休日も平日とあまり変わらないが、人の種が違う。
平日はサラリーマンやキャリアウーマンなどやはり、オフィス街が軒ならぶだけはある。
休日は配達人やボランティア、催しの関係者が多い。

今日は事件が起こりません様に、願いながら街を一歩一歩進む。

「薬局は…」

洗濯洗剤を買い求め、此処から近い薬局を探す。
店内に入り、洗剤を手に取った。
しかし…。

「あ」

"洗剤"とだけで、社名と銘柄が明記されていなかった。
通常ならばそこまで明記するのだが、どうやら忘れてしまったらしい。
目覚めは良かったが、寝不足が注意散漫を引き起こした。

「どれだったかな…」

大体の銘柄は記憶にあるので絞り込めたが、香りの部分だけが思い出せない。
確か、無香料じゃ無かった筈。
すると、"スパイシーアクア(潮風)"フレッシュスカイ(パイン)"ピンクシャドウ(桃)"レッドハーモニー(薔薇)"のどれかになる。

「色さえ覚えていれば迷わず購入出来たのに」

ハァ、と溜息を付いて悩んでいると背後から聞き慣れた声がした。
思わず振り向くとそこには、皆の憧れ、KOHことスカイハイ=キース・グッドマンの姿がイワンの視界を埋めた。

「何を悩んでいるんだい?」

イワンの隣にしゃがみ、手前の商品を見渡した。

「洗濯洗剤か」
「どの香りか忘れてしまって…」
「それは困ったね」

そう云いながらキースは迷う事無く一種の香りを取り、自らの買い物カゴに入れた。

「私もこの銘柄を使っていてね。気分でよく香りを使い分けているんだ」
「そうなんですか」
「折紙君もたまには香りを変えてみはどうかな?」
「外ではイワンでお願いします。キースさん」

イワンからの"キース"呼びに一瞬気後れし、すぐ訂正した。

「あ…すまない。イワン君」
「構いません」

微笑んだイワンは再び香り選びと格闘した。
選び終わるのを待っていては日が暮れてしまいそうな想像をしたキースは残りの三種の香りもカゴに入れた。

「?」

不思議そうは顔のイワンは頭に?マークが付いている。

「そんなに悩まなくても心配する事はない。私が使っている在庫がもう少しで無くなりそうでね。それを分けてあげるよ」
「え、わ、悪いですよ!」

引き止めるイワンをよそに一人でレジに向かい清算を済ましてしまった。
カゴが空だったイワンは結局何も購入せず店を出た。

「有難うございます」
「いや、良い。あとは買い物はあるかな?」
「はい。食材とそれから…」

メモをした紙を取り出し確認する。

「では付き合おう」
「悪いです本当に」
「構わないよ。車で来ているからね」

指を指した方向にキースの所有と思われる車が見えた。




「乗って?」
「…はい」

キースのペースでつい車に乗ってしまった。
こうして、人の助手席に乗る事はあまり無かったイワンは緊張が高まっている。

「仕事以外で二人で話すのはあまり無かったから、今日は存分に話しをしよう」
「…はい」

イワンは気後れの返事しか車の中では出来なかった。

「もうじき、お昼だから先に食事でもしよう」
「、もうそんな時間ですか?」
「君が薬局で悩んでいた時間が少し長かったからね」
「すみません」
「攻めているんじゃないよ。フレンチとイタリアンどちらが良い?」
「あの、日本食でも良いですか?」
「そうか。イワン君は好きなのか。覚えておこう。ワイルド君が知ったら喜ぶね」







The sky which it is gragrant, and dances.











終。
2012*07*22
-雪子-



香り舞う空









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