浮き立つ気体に空は落ちて







とある休日。
たまにはのんびりとしようと、珍しく家に居る。
天気も良いので買い物がてらの散歩も捨てがたかったが、今日はゴロゴロ日和と決めた。

新聞をとっていないので今、何の番組がどの局で放送さえているのかさえ分からない。
普段からさしてテレビを見ないイワンである。
専ら好きな音楽を聴いたり、映画や他のヒーロー達からお勧めや話題のドラマやらの情報収集で賄(まかな)っている。
適当にテレビのチャンネルをポチポチと回す。
すると、イワンの意中の男が瞳に映る。

"バーナビー・ブルックス・Jr"

イワンの恋人で憧れの人物。

「バーナビーさんだ」

思わず声が出た。
テレビに映るバーナビーは白いスーツを着てインタビューを受けている姿はやはりハンサムと云える。
ヒーローである時も素顔を晒しているのに、イワンは少し疑問を持っていた。
そんな事よりも、イワンはバーナビーをジッと見詰め顔を真っ赤にする自分に恥ずかしくなっていた。
鏡で確認していないの、実際に顔が真っ赤なのは定かではないが、頬を掌で触ると熱い。
画面ごしなのに、こんなに胸が締め付けられるなんて。

「嗚呼…心臓が張り裂けそう…!!」

クッションに顔を埋(うず)めソファーに横になる。

  ─ドサリ─

「逢いたいなぁ…バーナビーさんに」

生身のバーナビーに逢いたい。イワンはそればかり呟く。



  ─ガチャリ─

扉が開く音が聞こえた。

「ふぁぁ…何独り言を云ってるんですか?先輩」
「え?」

慌てて振り向くと、そこには逢いたかった男が欠伸をしながらこちらへ歩いてくる。

「ええ?あ、バババーナビーさん!?」
「人の事をバー*バパパみたいに呼ばないで下さい」
「スミマセン」
「それに。同棲しているんです。"逢いたい"なんて云われたらまるで僕が此処には居ないみたいな云い方をして…」
「だってバーナビーさん。起きてくるのが遅いから」
「天然ですよね先輩って」
「どこがです?」

横たわっているイワンの足元に座る。ソファーは大きいのでイワンがゴロッと横になっても一人分は十分座れる幅がある。

「この番組、インタビューで何の動物が好きなのか聞かれたやつだ」
「動物?」
「ええ。確か動物番組でしたから。何て答えたのかは覚えてませんけど」

バーナビーはイワンの左足を掴み、足首を撫でる。

「あ」
「先輩は栗鼠みたいですよね」
「リス?」
「小さくて丸っこくて、食べる時に頬にいっぱい詰める」
「丸っこいですか?僕。バーナビーさんより小さいのは認めますけど、食べる時も頬袋みたく詰めませんから」
「そうでした?まぁ、可愛い事には違いありませんから」

「バーナビーさんが動物と戯れてる姿、想像出来ません」
「失礼ですね。僕は動物大好きなんですよ?」

バーナビーは立ち上がるとキッチンへ向かった。

「朝ごはんにしましょう。先輩も手伝って下さい」

髪を結わき、エプロンを被る。
その仕草だけでもドキドキしてしまう。

「味見担当でお願いします」

トコトコとバーナビーの隣に並ぶ。
するとバーナビーの唇がイワンの頬に落ちる。

「な」
「先輩の顔、トマトみたいに真っ赤」

クスリと笑うバーナビーにイワンはトマトを冷蔵庫から取り出した。

「ま、まだこんなに真っ赤じゃありませんっ」

トマトとイワンを見比べる。

「だから先輩は可愛いんですよ」
「〜〜」



 ─浮き立つ愛情の気体は真っ青な空に落ちる─








   







終。
-umi-
2012*07*06
朝からイチャイチャしてる兎折。
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