黄金の樹海で貴方は空を泳ぐ
ただ貴方の温もりに包まれたかった。貴方の愛が欲しいそれだけなのに。貴方は皆のヒーロー。KOHなのだ。僕はただ、貴方の笑顔が見たい。だから、僕にもその笑顔で、その愛で満たして欲しいと望むのは欲深いのでしょうか?
二人でお洒落なバーで飲み交わし、食事もそこそこ済ませた夜。貴方はいつもの笑みで僕に話し掛ける。眩しい笑顔。貴方の笑顔は本物の心からの笑顔。
それに引き換え、僕の笑顔は偽りが引っ付いている。仕事としての。心からの笑顔など最近は滅多に表情に表れていない気がする。サマンサは別だ。成人を迎えてからも時間があれば僕の事をよく気に掛けてくれる。今だって誕生日にはこうやってケーキを焼いては贈ってくれる。
きっと、"大切な人に尽くす喜び"を知っているからこそ行動や表情に出る動作なのだろう。だから、貴方も僕に抱き締めて温もりをくれている。ソレを僕は心から喜べないでいる。真綿の真貝の様にキラキラ輝く貴方は僕には眩し過ぎる程なんです。
「抱き締めて温めて。そうやって貴方は僕に愛をくれる」
僕の手はまだ貴方の背に回せていない。回すことは容易い。だが回せない自分が居る。弱い自分を曝け出して相手に募ればダイヤモンドダストの雪崩の如く孤独を埋めてしまうだろう。
「手を回してくれないかい?そうしないと君はそのまま床に激突してしまう」
「ゆっくり倒してくれるんじゃないんですか?」
困った顔をしながら僕の手を取り貴方の首に回させた。
「背に回すのが嫌なら首でも良い。どこかに罪悪感があるならそれでも構わない。だけど、せめて、怪我の無い様にしたい」
「紳士なんですね」
「そうかな?」
「そうです」
「そうか。自分では気付けないのかもしれないね」
「そんなものですよ」
スッと床に倒されキスが舞い降りた。優しいキス。そう。貴方はいつも僕に優しいキスをする。純粋に僕を愛してくれる。一途に、ただ一途に。僕はその優しさに溺れ死にしたい。快楽の墓場に横たわり、貴方を骨の髄まで感じていたい。
愛撫され、絶頂させられ、中出しされ、僕は貴方と云う名の黄金色の樹海へと夢を跨いでいく。
−cHU−
「…キース…」
貴方の名を呼べば貴方は風の様にふんわりと笑った。
その笑顔が僕に幸福を齎(もたら)すのだと貴方は知らない。
黄金の樹海で貴方は空を泳ぐ
終。
-umi-
2012*07*29
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