澄んだ水は果てを穢さん



「先輩…」

僕がその事に気付いたのはもう遅かった。もう、喰べられていたから。
 
 兎は捕まって喰べられる。

「バーナビーさんを騙すつもりは全く無かったんですが、僕がタイガーさんに擬態している姿を見られてしまって、貴方は僕をタイガーさんだと思い込んだ。そして泣き付いて来たから仕方無く抱いてあげてるんじゃないですか」
「ひ、きょう…です。んんっ」

ズボンを脱がし、イワンはバーナビーのペニスを扱く。擬態をしたままで声を元の自分に戻す。そうやって青年を惑わす。彼の彼にしか出来ないパフォーマンス。
青年が自分の物にならないのなら、青年が恋をしている人物になれば良い。彼にはそれが可能なのだ。他の誰にも、完全に姿形を想い人に化け、寝取ろう事は不可能。姿形を変えてしまえば、視界は青年の想い人として映る。青年が目を閉じても声を聞けば"鏑木・T・虎徹"になりすます事は容易い。この姿で抱いてしまえば、青年に錯覚を覚えさせるには丁度良かった。

『ほら、声出せよ』
「嫌だ…せんぱい…」
「"虎徹さん"、でしょ?バーナビーさん」

僕とタイガーさんの声を出し分ければバーナビーさんは混乱していく。
ああ。
愛おしい人…。

『大人しく俺に抱かれろよバニー』

片手で青年の手を掴む。ハッとした表情が加虐心を燻(くすぶ)る。タイガーさん効果は絶大だ。瞳が左右に動き、動揺している。拒み切れない様な。泣きそうな。

「大丈夫です。優しくしますから。僕は気にしませんから思う存分、"虎徹さん"の名前を呼んで下さい。僕は貴方の力になりたいんです。バーナビーさんの…」
「あ、あの」
『俺は此処に居るぜ?バニー?』
「─おじさん─」

"虎徹さん"ではなく"おじさん"と呼ぶのは何処かで抵抗しているから。何処かで拒んでいるから。
でも、舌を入れるキスをすればすぐに絡み付いてきた。余程虎徹が好きなのだろう。

『楽しい楽しいセックスをしようじゃないか』
「おじさん…」

もうすぐイきそうな青年のペニス。扱き続けられたペニスは張り詰めていた。



本当は虎徹さんじゃないのに。本当は先輩なのに。なのに、身体が…心が…求めている。虎徹さんを。流されてしめば楽なのか。この感情が…想いが…。



「ああ…!!」

可愛く跳ね、青年は絶頂した。擬態した"鏑木・T・虎徹"の手の中で。

『良いぜバニー。そのイった顔』
こ…てつさん
『孕む程抱いてやるよ』







  





  可哀想なバーナビーさん








終。
-umi-
2012*04*14
初、折兎。
折紙が嫌な人になってますねコレ。バーナビーを抱きたいから虎徹さんに擬態して…。偶然、擬態しえいた姿を見てしまった事がきっかけなんですが。

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