サミーちゃんに嫉妬

 
   






「サミーちゃんサミーちゃん」
「SUMMY?」
「BUNNY?」
「バーナビーだって何度云えば…」

デスクワーク中におじさんが名前らしき言葉を発したものだから僕は思わず反応してしまった。女性の様な名前。いや、もしかしたら、僕みたに愛称呼びなのかもしれない。男性に対して。

「お前はバニーなの。と、サミーちゃんはっと」

携帯を弄りながら"サミー"と云う名を何度か呟く。気にならない訳ではない。ただ、今迄女性の名前が口から出てきた回数が少ないから。初めて聞く名前だし。新しい恋人なのかとからかってみても良いだろう。

「随分と可愛らしいお名前ですね、"サミー"て」
「だろー?最近のお気に入りなんだぁ」

鼻の下が伸びてる。やっぱり、恋人なのか。てっきり亡くなった奥さん一筋かと思っていたけど、貴方も酷い人なんですね。

「へぇ?写真、無いんですか?」
「バニーちゃん知ってるでしょ」
「え?」

僕が知ってる?何処かで会ったのかな?

「っもー、とぼけちゃって」
「?」
「ソレ」

ソレ、と指を指された方を見ると僕が使用している鋏に行き着く。え、鋏?

「ソレだよサミーちゃんて」
「鋏ですが?」
「まだ分からない?」
「ええ」

鋏をおじさんに取られた。その理由を聞いた僕は自分の嫉妬心に嫌気がさして、悪態を吐く事しか出来なかった。



   
          






  






「はっさみー、ハッサミー、サミーって」
「は?」
「は?じゃねょ。鋏」
「鋏?」
「まだ分からない?」
「?」
「俺ってネーミングセンス抜群だなー」
「流石、おじさん。おやじギャグ」
「おやじギャグは余計だ」
「***残念です」
「残念?」
「ええ。不規則でモラルが欠けている貴方にも女性が居たら」
「俺には奥さんと娘一筋だからな。幾ら、俺好みの女の子が現れても一線は越さない」
「一線を越えなければ良いんですか?」
「んな事ねぇさ」
「***」

"サミー"がこんな理由だったなんて。人ですらない。

「か、可愛いなぁバニーちゃんは」
「***」
「その兎みたいな口、そっくり。"***"な時の口が」
「兎の口なんて知りませんよ。それより、その"サミー"貸して下さい。仕事が捗(はか)りません。
「そっくりだって。雑誌に載っちゃったら大反響間違いなしだ。"レア!!ハンサムヒーローの御機嫌斜めな表情!!!!"って」
「******」
「あ、アレ?バニーちゃん?」
「(ツーン)」
「ツンバニーちゃーん」
「***(ツーン*ツーン)***」
「怒っちゃって。お昼になたらご飯食いに行こうな」
「(コクリ)」
「もしかして、俺に恋人でも出来たと思った?」
「(!)」

図星。睨んで振り向くと、何ともアホな表情でこちらを見ているので記念に写メを撮ってやった。

    ─カシャリン─









終。
2012*04*08
-umi-
虎徹が鋏に名前をつけて、バーナビーが嫉妬するお話。
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