好きだなんて云われても私は好きじゃない



「好きなんだ」

そう突然云われて、私は思い切り平手打ちをした。今迄、特別意識した事など無い人物に突然告白されたら…。まぁ、平手打ちした私にも非があるんだけど。何しろ突然だったから。


      


「私が本当に好きなのは…」
「虎徹さんですよね?知ってます」
「え?」

走って逃げた先に、先程平手打ちをした相手がそこに居て驚いた。トレーーニングルームに逃げ込んだので、誰かしら居る事は推測されるが、まさかこの人とは。

「良いんです、別に。貴女があの人を好きだとしても」
「え?」
「僕は貴女が誰を好きだって僕は貴女が好きなんです」
「云ってる意味が分からないんだけど…」

そう云いながら私に近付く姿は男で、私は動こうにも動けなかった。怖い訳ではない。拘束されている訳でもない。ただ、この人の表情があまりにも切なく、泣きそうな顔をしていたから。

「貴女が好きなんです」

そっと優しく抱き締められた。私は抵抗する事も忘れ、きっとこの人と同じ様な顔をしていたのかもしれない。この人の感情は私に少し似ている気がしたから。
きっと、この人もタイガーが好きなの。他人には隠しているつもりなのだろうけど、コンビを組んでる時、タイガーと接している時のこの人の表情や仕草はうっかりしていると見逃してしまう程に、輝いて見える。
まるで、恋する乙女の様に。










「わ、私はアンタの事なんか好きじゃないわよ馬鹿!!」

そう云って、再び平手打ちをかましてトレーニングルームを駆け出した。











終。
2012*04*02
-umi-
タイバニの私の中で新しいカップリングを模索していたら、兎薔薇って可愛いのではと思い、書いてみました。兎→薔薇。そしてお互い、虎徹さんが好きなんだと思う。

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