毒愛針と甘いチョコレートと甘い罠





「はいコレ」
「何?」
「何ってチョコレートだけど」

手渡されたのは小さな小箱。中身はチョコレートだと云う。

「まさかお前から貰うなんてなぁ」

照れながら云う勅使河原につっけんどんな態度の風見。

「べ、別に余ったからあげるんだからなっ」

プイと顔を逸らした風見を見て勅使河原は近付き、手の甲に口づけをした。


    −cHU−


「…っ!」
「他に誰にあげたか気になるけど、このチョコレートでチャラにしてやる」
「安心して。誰にも渡してない」
「じゃあ余ったって云うのは?」

己の手の甲を勅使河原の口から離す。

「幾つか買って、あげる日の気分で選んだから余っただけだよ」
「幾つ買ったんだよ?」
「秘密」
「全部くれよ」
「嫌だよ」
「責任持って食うからさ。」
「十個」
「は?」

自慢げな表情が癇に障る。

「だから十個!あれもこれも選んでたら悩んで全部買っちゃったんだよ。文句ある?」

頬を桃色に染め文句を垂れる姿が面白い。

「ツンデレめ」
「ツンデレ云うな」

「明日、持ってこいよそのチョコレート達」
「重いから取りに来て」
「それってお泊りのお誘い?」
「どう考えてもそんな解釈はないと思うけど」
「今度一発ヤらせろよ?」
「帰ったら用意したチョコ全部燃やすよ?」
「あー!悪い悪い。それ位楽しみだって事」

「受け取りに来てくれるんでしょ?」
「勿論」
「じゃ、今日ね」
「今日?」
「は?着替え持って来てねぇぞ」
「誰が泊まらせるって云った?」

頬を摘まれた勅使河原は「痛い」と顔を歪ませる。

「君の歪んだ顔、僕は好きだな」

聞こえるか聞こえないかの声で呟く。

「何?」
「何でもない」
「人の歪んだ顔が好きだなんて悪趣味だよなぁ」

耳元で囁かれたものだから、背筋がゾワリとした。何だ、聞こえていたんじゃないか。

「聞こえてない振りをするなら最後まで隠しておいてくれる?」
「出た。上から目線」
「嘘吐くの下手だよね。ああ、セックスもか」
「正直者って云うんだぜ?あと、セックスは下手じゃねぇよ。お前だっていつもイキがってるのは、もしかして演技だったりすんの?」
「ふ…」

学校でキスとか許してない。煽ったのは己だが、ここで盛られたのは予想外だった。

「今晩、学校に泊まってかねぇ?」
「じょうだ…ん、」
「理科準備室とか」

 ─Chu─

「は…」
「あの部屋なら外からも廊下からも見えない。ゴム持ってるし」
「馬鹿云わないで」

     −チュ−

「飯食わなくてもセックスしてれば朝なんてあっという間だしさ」
「う…んぁ…」
「な?」
「こ、んど…」

風見はきっぱりと断らず、次の逢い引きへの提案出した。

「今度に…して、」
「今度?」

 −Chu−

「コンビニで何か買ってくるから。何も口にしないのは健康に悪いから」
「マジで?」
「は?」

キスをしていた雰囲気など、どこ吹く風、と云った勢いで豪快な笑顔と声が教室に響く。

「俺はお前さえいれば一食不足しても大丈夫なんだが、やっは、お前は病弱だから何か食わないとな?」
「誰が病弱だよ」

ギュウと抱き締められ、文句を他所に、耳元に聞こえた声に勅使河原の本気が見えた。

「じゃ、俺も何か用意してくるから。約束だぜ?」

約束。やはり、勅使河原には冗談が通じないと風見は提案してから後悔する。

「美味しいモノ買ってきてよ?」
「…現金な奴だな」
「学校でセックスしたいんでしょ?それ位は望んでも良いと思うんだけど」
「ま、良いや」


「明後日は?」
「随分と早いね」
「善は急げ、だろ?」
「使う場面違くない?」
「俺は早くお前とセックスしたいの!」
「はいはい。帰るよ?」

風見はカバンを持ち、扉を開ける。続いて勅使河原も忘れ物が無いか確認し、二人で教室を後にした。

「帰るよ?って飼い主みたいだな」
「君が犬?」
「ワン」
「こんな駄目犬御免だね」
「酷ぇな」
「躾のし甲斐はあるよ」
「本気で酷ぇ」






毒愛針と甘いチョコレートと甘い罠










終。
2012*02*02
-umi-
早いけどバレンタインネタ。風見君がツンデレ化してる。





- 6 -

[*前へ] [#次へ]

戻る
リゼ