ハニー*ハニー*メープルパンケーキ

「キスと蜂蜜と奇好」の続き。




   



「この間の約束」

授業の中休み、僕から勅使河原に声を掛けた。

「約束?」

何だっけ?とはぐらかすような不穏な仕種で恒一を見る。教室の中では、約束の内容など云えない。アレ、やらソレやらで相手に伝えようとしているが、相手には届かないらしい。

「何か漫画とかCD貸す約束してたっけ?」
「違うよ」
「うーん…」
「ほらアレ」
「アレって云われてもなぁ」

腕組して頭を傾げる。あと2分程で次の授業が始まる。それまでに出来れば思い出してもらいたい。

「何だっけ?」

ケロッとした笑い顔で聞き返すから僕は「本当に覚えてないの?」と残念な口調で告げる。

「仕方ないだろ?覚えてないんだから」
「そう、なんだ…。次の授業始まるから席、戻るね」

本礼が鳴る前に席につこうと勅使河原に背を向けたか向けないかで手を掴まれた。

「え?」

掴む力はあまり強くなかった。

「何?」
「今日だったよな?放課後、理科準備室で」

含み笑いで呟いたと同時に教科の担任講師がやってきた。

「覚えてたなら早く云ってよ」
「どさくさに紛れてた方が怪しまれないだろ?」
「何が?」

がやがやとしていた教室は講師の登場により、次第に静かになってゆく。二人の会話も聞き取り易くなる。そろそろやめなければ、誰かに待ち合わせ場所とおおよその時間を聞かれてしまう。もし、聞かれたとしても、何かの話題に切り替えれば良い話だが。

「そこ、早く席に着きなさい。授業始まりますよ?」

透き通った女性講師の声が、更に教室内をシンとさせた。

「あ。すみません」

いそいそと席に戻り科目の教科書とノートを取り出した。





   放課後





理科準備室の机は生徒六人座れる広さの机が幾つかある。
その机に腰掛け、彼に足を投げ出した。

「上履きと靴下脱がせて?」
「すっげーなお前」
「早くしてよ」
「へいへい。脱がしたら舐めて良いんだよな?」
「分かってるなら、そうシてよ」
「女王様だな」

文句を垂れつつ恒一の靴下を脱がし、裸足になった右足に舌を伸ばす。

「あ…」

ぬめりとザラつく舌の感触が足に伝わる。ペニスや胸、腹などは舐められた事はあったが、足先は舐められた事はなかった。指と指の間に勅使河原の舌が入った瞬間、恒一は「ひゃっ」っと可愛らしい声を出してしまった。慌てて口を閉じて勅使河原を見た。

「舐められたトコ、初めてだったから思わず感じた?」
「ちがう」
「足の間なんて舐めないからなな」
「ならやめてよ」
「やだよ」

足を引こうとする前に彼に引き寄せられた。親指、人差し指と間ごと舐められ、少年の反応を伺う。桃色の頬で恥じらっている。それが、少年の茶髪と相まって美しい。舐めろ、と云う
った本人が一番恥じらって相手を翻弄する。

「分かったから…」
「何が分かったの?」

薬指と小指の間に差し掛かると制止の言葉が降り注いた。だが、分かった。ではよく分からない。

「もう充分?」
「…うん」

片足のみで、足の間を舐める行為は終わってしまった。そこで「はい、そうですか」と終わる彼ではない。もう充分だと云う少年の反対の足と、舐め終わった足とを差し掛えて再び舐め始める。

「ん…」

指の間に挟まれている舌の感触はやはり居心地が悪い。一本一本舐められるのも、愛撫されているみたいで同じく居心地が悪い。


「丁度この部屋だから試験管挿れてみたかったんだけど、良いか?」
「は?」
「ココにあるから」

そう云う彼の手には何時の間にか、試験管が納まっていた。ただでさえ、通常の挿入でも恥ずかしいし、痛いし、慣れないのに試験管?冗談じゃない!!

「絶対嫌っ」
「絶対気持ち良いって」

足の指を舐める事をやめて試験管を挿入するかしないかでモメ始めてしまった。

数分の末に少年が勝ち、彼は渋々試験管を元にあった位置に戻した。



      



「こんな事してたら、パンケーキ食べられなくなる…」
「サカキが足舐めろって云うから」
「だからって突っ込むって話は出てこないだろ?」
「生殺しにする気かよってか俺、挿れえねぇし…」
「たまには良いんじゃないの?生殺しも」
「いつだって嫌だよ、そんなの」
「パンケーキ食えなかったのそんなに恨んでんの?」
「パフェだから」
「そうだっけ?」
「…もうどっちでも良いから、近い内に連れてってね?」









**




いつになったらパフェが食べれるんだろう?パンケーキじゃなくてパフェが食べたいの。パンケーキも美味しそうだけど。どっちにしても勅使河原の奢りじゃないと許さない。試験管まで挿れられそうになったんだから!










終。
-umi-
2012*04*08
「キスと蜂蜜と奇好」の後日談。

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