オルゴールの標本  


「榊原恒一君」
「え?」

放課後、一人歩く恒一に声を掛けたのは風見智彦。眼鏡を掛け、優しい笑みをして恒一を見ている。刺が無さそうな好印象を受ける。

「初めまして」
「は、初めまして。って昼間会話したんだけど…」
「病院では一度面識あったけど、学校で会うのは初めてだからね」「そうだね」
「改めて宜しく」

手を差し出された風見の手を戸惑いながら自らも手を差し出す。

「一つ注意点があるんだけど」
「注意点?」
「うん。"彼女"にはあまり関わらない方が身の為だよ」
「"彼女"?」

握られた手に力が込められる。
いたっ

痛みで片目をつむると、風見の顔が視界一杯に広がった。

「今後、安らかな学校生活を送りたいなら…」
「……」
「はいコレ。退院祝い」

小さな小さなオルゴールが制服の胸ポケットに入れられた。

「そのオルゴール。僕のお気に入りなんだ。二つあるから一つ榊原君にあげるよ」
「?有難う」
「そのオルゴール、無くさないでね?榊原君の標本の代わりだから」
「標本?」
「そ。魔よけって云い換えれば分かるかな?」
「ああ…魔よけね。大切にするよ」

顔が離れ手が離れ、風見は恒一に背を向けた。

「じゃあね。また明日」
「うん。また明日」



言葉に出来ない違和感が恒一の胸に残る。この感情は恐怖なのか畏怖なのか友情なのか分からぬまま、風見の背を眺めるしかなかった。











終。
2012*01*12
-umi-
Anotherを何度か見て書きなぐり。早くも、恒一君受けを発症しました。まずは、風見君と恒一君。
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