澄み切った炭酸しゅわしゅわ






「どうですか?体調は」

穏やかな声
耳に心地好い

「大分痛みも引きました。それに−」
「それに?」

屍から受けた魔障により、火傷の様な傷を負った腕はまだ少し跡が残っている。

「毎日お見舞いに来てくれるんです。それが嬉しくて」
「そうですか」

"誰が"と聞くのは野暮だろう。"塾生の誰か"なのだから。
張り付けた様な笑みで云えば朴もニコリとした。

「騒がしくないですか?特に兄は」「楽しいですよ。栄養価が高い料理を作ってきてくれたり、勝呂君達は勉強に遅れない様に私の分までノートを書き写してくれます。杜山さんは綺麗な花を、出雲ちゃんは寂しくならないと強気な口調でヌイグルミをくれたり」

楽しそうに話す朴を見て、雪男は内心安堵した。
幾ら能力強化の為とは云え、度が過ぎてしまう結果になったのだ。
最悪、この少女は命を落としていた可能性も秘めていたのだ。
朴は誰も責めない。
少なからず、塾を誘った神木出雲を責め立てる事も出来る。
あの状況を監視していた講師陣も生徒の命に関わる事態ならば、手を出す事も可能だった。

「私、皆が好き」

それは、少女にとってはもう過去の出来事なのだ。
だから振り返らない。
だから前向きに考える。
考えていた。

「僕の事もですか?」
「え?」

不意に出た言葉だった。
朴は純粋に友達として、彼等が好きなのだ。
しかしそれは、講師である雪男は入っていないとも考えられる。
だからそんな言葉が口から出てしまった。
恋愛感情でなくても良い。
ただ、この少女が純粋に自分を好きでいてくれる事だけで良いのだ。

「す、好きですよ?」
「疑問形ですね。講師として?友達として?」

仄かに赤い頬の朴。
雪男を見れば、優しく微笑んでいる。

「せ、先生としてはとても素敵だと思いますっ友達としては、普段学校で会わないので…上手く云えません…」

確かに学校では科が違うので、会うのは中々無い。昼休みに見掛ける程度だ。雪男は特進科で女子からもモテる為か塾生と会う機会はかなり少ない。会ったとしても軽く会釈する程度だろう。皆、塾に通っているのはあまり公にしていない。接点の無い者同士が会うのは人気のある人間を相手にすると目立つ。有らぬ噂を避けるのも手伝い、塾生達と会うのは塾の時が専らだ。

「すみません。普段、学校ではあまり会話をしないので、そう云えば姿勢を崩して接してくれるかと思いまして…」
「あ、私ったら///先生と思うと緊張しちゃって…」

更に赤くなる朴。
そんな反応を見つつ会話を続ける。

「では、同級生としてもう少し話しませんか?」
「はい。なら、奥村先生も敬語をやめてくれますか?」

赤い頬はそのままに、明るい表情になる。

「朴さんも敬語と先生呼びをやめるように」
「はい!!」
「(…今、敬語使わないって云ったばかりなのに)じゃあ、何から話そうか?」







 







終。
-umi-
2011*10*07
雪朴。
なんて可愛らしい組み合わせか!!
- 25 -
[*前へ] [#次へ]
戻る
リゼ