アコーディオンの不協和音
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 雪燐



街を歩いていると、どこからかアコーディオンの音色が聴こえてきた。何処か懐かしく儚げな音色。今の僕の心の中を映し出している様に奏でられる。兄に対しての。兄からの言葉に、返事を出そうと数日考えさせてもらう時間をもらった。今日がその返答保留の最終日。この曲が終わるまで答えを出そうと考えた。だが、聴いている内に心臓の鼓動が早まる。まるで不整脈の様。綺麗な音色が次第に濁って聴こえ、気分が悪くなり、その場を離れた。数メートル離れた所に兄の姿が見え、向こうも視界に僕を捕らえるとニコリと笑う。つられて僕も笑おうとしたが、笑えなかった。

「アレ、雪男みたいだな」

僕が笑えなかった事に気付かなかったのか、アコーディオンを指差して云った。

「どこが?」

全くその通りである。一体何が僕みたいだと云うのか。

「何となく」
「何だよ、何となくって。答えになってないよ」
「双子だから分かれよ、それ位」
「なら、勉強も僕に似て欲しかった」

兄がアコーディオン奏者へと歩を進める。僕が気分が優れないので嫌だったが、不思議と兄と一緒だと、スーっと気分が晴れた。

「嫌味か?それよりも今夜、返事聞くからな?」
「…まだ答え出てないって云ったら怒る?」

弱気な口調で尋ねると「その時までに出せば良い」と頭を撫でられた。
口ではそう云いつつも、心の中では答えは出ていた。


だって雪男みたいに、儚げに何かを隠した様なアコーディオンの音は、お前を縛り付けたくなる。今夜が勝負だ。


*...*...*...*END*...*...*...*





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