パステル・スター
 
 
 
 
 

一体全体どうしたのだろう?
志摩から借りたエッチな漫画にこんなシチュエーションがあったような気がする。男が女を押し倒し、キスをする話を




今、正に俺がしえみを押し倒してしまっている状況だ。当のしえみはキョトンとして不思議そうに俺を見ている。きっとこの体勢の意味を知らないのかも知れない。何せ、家の外にはあまり出ていない。塾には通っているが、こんな事をするような場所ではない。俺が勢い余って押し倒してしまった理由を詫びるのが先だろうか?偶然を装ってこの場をやり過ごそうか?きっとしえみなら後者でも通じそうだ。世間知らずのお嬢様って感じだし。


「燐?」
「え?ああ…」

名前を呼ばれ、思考していた意識を戻す。保健室の独特な消毒液などの匂いが鼻につく。保健医は外出していて、此処に居るのは実質俺達二人きりとなる。フカフカとは云うえないベッドの上にしえみが居る。その上には俺。恋人同士ならこれから甘い時間になるのだろう。流石にキスをしたら疎いしえみでも何かしらの反応はあるだろう。

「どうしたの?」

ほらきた。飲み込めていない反応。これが朴や出雲だったら悲鳴あげてビンタの一発でも喰らいそうだ。

「燐、具合悪いんだからジッとしてなきゃ。私が横になっても意味ないよ」

何て幸福な思考をしているんだろう?何て可愛らしい事を云うのだろう?きっと、これが仮病と偽っているのを知ったら怒るのだろうか?

「しえみ」
「何?」
「押し倒されてる意味、分からないのか?」
「燐がした事知らない訳じゃないけど…」
「…」
「…」

沈黙が痛い。心にある気持ちを素直に云ってしまえばこの場の流れで行けば上手くいくかもしれない。燐はしえみの名を呼び重ねていた手に力を入れた。

「しえみ俺っ−−「そ、そんなに一人が寂しいなら一緒に居て「お前の事が」あげるから燐、横になって?「お前と」ね?」

二人の言葉が同時に出たので、互いに何と云ったのか曖昧だった。燐はこの場の雰囲気任せで強行手段に出ようと試みた、しえみは燐からどこうと説得をしていた、のが何となく互いに通じたらしく二人は顔を真っ赤にさせる。

「や、やっぱ駄目だよな?」
「わ、私だって燐とエッチな事したいって思うよ?でも、まだ、早いって云うか…心の準備が……」

燐がしえみから離れようとするとギュッと燐のネクタイを掴まれたので、再びしえみの上に被さってしまった。これ以上は駄目だ。燐は感情の警鐘を知る。

「けほ…ネクタイ引っ張るなよ。苦しいだろ?」
「あ。ごめん」
「そ、それより…ほほ本当か?俺と…エ、エッチしたいって///」
「え?(ボッ///)!!」
「ま、マジなのか?(ボッ///)!!」
「嘘云ってどうするの?」
「…いや、だってお前、そう云うの知らなそ−−ぶっ!!」
「燐なんか知らない!!勇気を出して雪ちゃんに相談してきたのにっだから燐はデリカシーがないって云われるんだよ?明日は塾に行かないから雪ちゃんに伝えといてね!!」

   −バタンッ−

「いってーな!グーで殴る事ないだろ?ってもう居ねぇし」



   




「燐がいけないの。燐が。いきなり押し倒してくるから。って私が燐に抱き着いたのがいけないんだけと…自分の足に絡まって隣に居た燐が手を差し延べてくれたから。思わずしがみついちゃって。燐がいけないの。燐!!燐!!」

「おや?どうしました?しえみさん」
「あっ雪ちゃん…」
「な、何でもないの」

ブンブンと手を振ると違和感に気付いた。手ぶらでいる自分。カバンを保健室に忘れてきた事を思い出す。

「カバン…」
「カバン?」
「保健室に忘れてきちゃった…」
「具合悪かったんですか?」
「うん、ちょっと…でももう治ったから大丈夫」
「そうですか。では、お店に行く用事があるので仕事が終わり次第カバン届けますが?」
「悪いよ…取りに行けば良いだけだから」
「駄目です。何やら顔色が勝(優)れていない。先に帰って下さい」
「じゃぁ、お願いします」



矢継ぎ早で去っていくしえみを見ながら、小声で呟いた。


「全く兄さんはしえみさんに何をしたのか問い詰めなきゃ。昨日のしえみさんの相談と良い、しかもさっき授業中二人して保健室に行ってから付き添いだったしえみさんが戻らず、今のぎこちない態度がその証拠」



「これから燐にどう接すれば…」






    パステル・スター




終。
2011*07*15
-umi-
ツイッター診断の結果でした。燐しえ、可愛いけど難しい…
しえみちゃんが燐君の為に、雪男君にエッチに関する相談をする→燐君の付き添いで保健室に二人→しえみちゃん押し倒される→グーで殴られる燐君→もやもやしながら廊下を歩いていたしえみちゃんに雪男君登場。
な展開でした。
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リゼ