暗闇の中の糸は赤、甘美な旋律と、
く闇夜に映える。二人に結ばれたは今、解かれ様としている。こえまで愛を育んできた筈の二人に。少年が第三者に犯された。それが原因だった。その罪は男によって裁かれる。再び結びつける為に─





「どうした?この痣」

甘い雰囲気を漂わせていた香りは少年の肩に付いた痣がきっかけで香りを変えてきく。六日振りに逢えた。夕食を取るのも煩わしく、再開したと同時に行為に走ろうとした二人は今日のこの展開は珍しかった。この痣が無ければ、朝まで甘い香りに包まれていただろう。綿飴の様な、柔らかく、甘美な甘さは痣と云う名のスパイスで消え去った。だが、少年の理由一つで誤魔化せた筈だ。"嘘も方便"を使っていれば回避出来たかもしれない不協和音。強張る旋律。








 






「転んだにしてはどうして、肩だけなんだ?」
「それは」
「他にも痣が出来てもおかしくはないのに」
「その」

言い訳にごもごもしていると、男は少年のベルトをカチャカチャと外して下着諸とも脱がせた。ベッド上での抵抗ではスプリングがギシギシ云うだけで男は手際良く、少年を丸裸にしてしまった。靴下のみ少年の身体に纏わり付き、えもいわれぬ色気が出ている。

「リディさんっ」

あっさりと裸体を曝け出され戸惑う少年。

「他にも痣が出来てないか見てやるよ」

クルンと少年をうつ伏せにさせ、うなじ、背中、腰、太腿、脹脛(ふくらはぎ)、足裏とゆっくり行き来する。

「ああ…」
「感じてんの?愛撫する程度には触ってないんだけど」
「ちが…」
「そうだろ?」
「違います」
「どこが?」



「証明してやるよ」
「え?」
「バナージが浮気してなかったか」
「う、浮気なんかしてません」
「本当?」

二回程行き来した後、うなじの髪をあげ、舌を這わせる。

「ひゃっ…」
「約、一週間逢ってなかったからな」
「んん」
「俺は耐えてたんだぜ?戦場で捕らえた女を無理矢理犯す事も出来たが、俺はバナージ以外には手を出さないって誓ってるから」
「リディさん」
「折角逢えたってのに、得体の知れない痣なんか見せられたら、もしかしたらって考えちまう。誰かに乱暴されたのかって」

舌が痣のある左肩に移動すると、男の右手が少年の秘部へ入り込む。

「ぅ…」
「確認させてもらう」
「な、何を?」

何の確認か少年には分かっていた。この行為の最中だ。それが理解出来てしまうから、少年は戸惑ってしまう。もし、"あの事"がバレたらと。

「云ってもらいたい?」
「い、いえ。か、確認するなら早く挿れて下さいっ」
「?」

何時に無く積極的な少年の言葉に男は頭に疑問の念を置く。もしかしたら、本当に何か隠しているのかもしれないと、結論が打算された。

「突っ込みたいのは山々なんだが、疑問解決に一役買ってくれたら、気絶するまで抱いてやるから」
あ、あの…
「だから」

そう云いつつ、右中指を少しづつ挿入すると、少年は急にしおらしくなった。その行動こそ、少年が"何かを隠している"と云う事を物語っている事になる。

「はぁ…」

やはり、何かが違う。僅かばかりスムーズに指がはいるのは、少年が一人で自慰しているとも考えられたが、違う何かが指に絡み付いてくるのだ。

「やっぱり」
「リディ…さん」

薬指も追加し、二本で中を抉(えぐ)れば、更にその得体の知れない何かが正体を現す。

「これ、指を抜いたら"誰かさん"の精液でしてってオチは期待したくないな…」

ヌチュッと音を立てて指を抜けば、案の定、ソレが姿を男の眼前に映る。

「なぁ」
「それはっ」
「誰の精液だ?」

男は極めて冷静な口調で少年に問い掛ける。少年の性格上、自ら抱いてくれと他人を誘う様には見えない。だが、"もし"と云う事も一理ある。雄雄しい男ばかりの軍人達が多い中、この華奢な少年は恰好の餌になるだろう。

「あのっ」
「別に怒っている訳じゃない。この状況に陥った経緯が知りたいんだ」
「それは…」
「云ってくれないと、俺はバナージに酷い事をしてしまうかもしれない」

序々も弱まっていく男の声に少年は、唾を一口飲み、事の経緯を語り始めた。身体を向き合う様にして少年に毛布を羽織らせてあげた。


「マリーダさ…、"袖付き"の拠点でる"パラオ"に居た時に、俺も人殺しだって云われながら肩を踏まれたんです。そして、その夜に呼び出されて…犯…されて…

毛布に完全に包まった少年の声は泣いている様に聞こえる。しんな少年の姿に男はただ、優しく抱き締めてやる事しか出来なかった。あのまま行為を積極的に求めていたのは、その怖い思いからの脱却だったのか?自分は此の方、幸いにも犯された経験が無い為、少年の心を全て理解出来る訳ではないが、理解しようと努力は出来る。

「気が済むまで泣いて良い。でもそれが残っているなら、昨日かその辺りか?」
「昨日…」
「って事は今日、ここに着いたのか?」
「はい」

犯された後、一人になった少年はシャワールームで男が吐き出した精液を処理し、急ぐ様にユニコーンに搭乗し、"パラオ"から抜け出した。日付が変わるかの時間帯にロンド・ベル拠点のあるコロニーに逃げ込んだ形で来たと云う。

「辛かったな」
「グズッ…」
「落ち着いたら、きちんと処理をしよう」
はい゛

ぽんぽん、と優しく背中をあやす。

「顔位出せよ。苦しいだろ」

顔の部分だけをペラリと捲ると泣き顔の少年が姿を見せる。

「ぷぷ…すっげぇ顔」
「…」

涙と鼻水でぐちゃぐちゃの少年の顔は笑ってはいけなかったが、つい笑ってしまった。笑う事で場が和めば良いと思ったから。

「びどい゙でず…」
「酷いな。お互いに」
「ゔゔー」

頬を膨らませ怒りながら唸る少年に男は更に笑う。ポケットからハンカチを取り出し、涙と鼻水を拭った。

「こんな可愛いバナージ、他の男に見られたってのは許せない」

笑っていた顔が急に真剣な眼差しになり、少年と視線を絡ませる。その男の表情に少年は剥れていた頬をそのままに、心臓をドキリと跳ね上げた。

「また犯されたら、すぐに俺の元に来い」
「あ、有難うございます。でも、もう同じ様な失態はしません」

少年も負けじとキリっと凛々しい表情で男に云う。

「今夜は御預けだな」
「なにを?」
「何って、ナニだよ」
「ああ…それよりも、リディさんが処理してくれるって話はどうなったんですか?」

少年は男の首に腕を回し、耳元で囁く。

「だから今夜はやめよう」
「どうして?」
「どうしてって。そりゃバナージ、その一件のすぐ後にセックスはしたくないだろ?」
「…」
「な?」
「でも」
「…」
「リディ少尉となら、」
「バ−−」

男が少年の名前を呼ぶの前に唇を塞がれた。少年の唇によって。

「俺は貴方が良いんです。リディ少尉が。中を綺麗にして下さい」

   −CHU−

「綺麗にするだけだからな」
「分かってます」

 −cHU−

「でも、俺がその気になったら抱いて下さいね?」

少年の脚が男の足首に絡み付く。

「それはどう対処しろと?」

      −ChU−

「貴方に任せます」
「参ったな…」
「抱いてくれて構わないんですってば」


「取り敢えず黙ってくれ」
「…」


腕を掴み、シャワールームへと連れて行く。コックを捻ると暖かい水が二人を濡らした。

「アン…」
「変な声出すなよ」
「だってリディ少尉がいきなり触るから」
「触らなきゃ出せないだろ」
「その前にリディ少尉のを中出しして、一緒に掻き出してしまえば良いじゃないですか」

男は手を止めて、鳩が豆鉄砲を喰らった様な顔をする。

「?」
「犯されただけじゃなく、そこまで調教されたのかよ…」

少年は目をクリクリとさせて笑う。

「なんなら−「黙れ」
「リディ少尉好みに調教すれば何の問題もおきません」
「なっ」

「お前…それ、本気で云ってるのか?」
「そうですけど」
「バナージをここまで淫乱にさせた奴、ぶっ殺してやりたいな」
「物騒」


「あっ」

男の左中指がスッと少年の秘部に入る。

「じゃ、御望み通りそうシてやるよ」
「んっ」

クチュクチュと秘部から音が聞こえてくる。

「リディ少尉」
「少尉はやめろ」

その台詞は、これから二人が恋人になる瞬間。セックス開始の合図の一つでもある。元より二人は恋人同士だが、セックス時に改めて関係を整えるのが無意識になっている時が見られる。

い糸が結ばれ様としている。見方によれば、浮気とも強姦とも取れる今回の一件。少年の証言で後者の色が濃い中、男はそれがどうしても許せなかった。第三者によって少年が犯された。い糸が解かれかけたから。仮に、少年がそのまま、第三者に恋をして男の元から去ってしまう可能性だって考えられた。強姦相手に恋に落ちる可能性は低いとしても、僅かなパーセンテージがあるならば、と思うと男は少年をい糸でグルグル巻きにし、独占欲丸出しで少年を守るだろう。

「リディさん…」


−今宵、甘美な旋律が夜の二人を彩る−












終。
2011*12*29
-umi-
アンバナ(アンジェロ×バナージ)を絡ませつつ本編はリディバナ。見知らぬ痣に嫉妬するリディ少尉。今回も途中からバナージが積極的に。
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