踊ってはいけない残酷ワルツと王女様
お前を独占したいが為にお前を監禁した。お前を振り向かせたいが為にお前の気を引こうとした。お前を俺のモノにしたいが為にお前を犯した。それでもお前は俺を軽蔑しなかった。それが逆に俺に火を付けさせた。俺を軽蔑出来るようにもっともっとお前を…





  ツと王女様







「こんばんは。バナージ・リンクス」

冬の、しん、とした空気の中に一人の人物が漂ってきた。夜の冬は寒く、暖房などで部屋を暖めていないと指先が冷え込む。しかし、この部屋はその暖かさは無く、ひんやりと寒い。照明は明るいが、男が入室すると残りの照明を全てつけた為、更に明るくなった。

「…この声…リディ少尉、?」

声で相手が誰なのか判断する。

「って、此処俺の部屋だから当たり前だろ?」
「…確かに」
「…寒かった?」

男は少年に近付き、目隠しを取った。目隠しが取られる。視界が一気に明るくなると、照明の明るさで目が眩らむ。眉間に皺が寄り、歪んだ視界に男が映る。

「う、眩しい」

目に入る光を軽減するには手を翳(かざ)す方法もあるが、両手を縛られている為にそれが出来ない。目を細めた少年に男は少年の頬に触れる。冷たい頬は男の手の体温の部分だけじんわりと温かくなっていく。「冷たいな」と囁くと前髪を掻き上げた。猫っ毛な髪が気持ち良い。男の額がヒタリと重なり、そこからも男の熱が伝わる。

「熱はないようだな」
「風邪を引いても可笑しくない程寒かったんですよ」
「すまない」

額から離れると伝わった熱はすぐに冷めてしまった。頬も。

「一時間位だったから平気だと思ったんだ」
「酷いですよね」

空調機のスイッチが入り、暖房特有の匂いと温かな風が少年に当たる。

「この両手も解いてもらえませんか?」

男に背を向け、両手を少し突き出す。目は自由になっても、両手が使えない事には何かと不便でしかない。

「解いたらつまらないだろ?」

男は突き出された少年の腰当たりにある両手ではなく、その下の尻を触り出した。

「ちょっ!」

慌てた少年の身体を反転させると正面から向き合い、抱きしめた。右手は頭、左手は尻に触れている。

「冷えてるんだろ?」
「はな、」
「温めてやるよ」

尻を揉まれ、身体が嫌な反応をする。期待と呼ぶ淡い可能性。両手を縛られているままでは普段以下の抵抗で、身じろぐ他ない。それが余計、男に縋り付く形になる事に少年は気付いていない。後頭部を掴まれている為、下半身だけが外へ逃げようともがいた姿に男は笑みを浮かべる。

「逃がさない。だからこうして監禁しているんだから」
「リディさん」
「本当に嫌なら、とっくに逃げ出している筈」

ラー・カイラム艦内に収容されてから、数週間経過している。ユニコーンに関しては徹底して厳重なのに対し、パイロットであるバナージ・リンクスに至っては、ブライトが下した人物に監視をさせる、と云うだけの粗末な対応である。だが、それが男にとって好都合であり、少年にとっても好都合?で有り得た現在。監禁と呼ばれる行為をしていながら、二人は愛し合っている。時には手法を凝らした愛も乙なもの。身体を重ねるのに不慣れなままの少年と何の事でもない男の差。

「痛い」

年齢的な物だけでなく、育った環境、人間関係、それら全てが異なる。唯一、同じなのは"惚れた女が同じ"位だろう。あとは"身体の相性"か。

「痛い?」
「解いて下さい。早く!」

頭と尻から手を離し、両手の拘束を解いた。自由になった両手は痺れてジンジンする。

「少し赤くなっちゃったな」

男に両手を差し出すと優しく摩ってくれた。

「これじゃぁ監禁ですよね」
「軟禁」
「軟禁と云うのは、外出させずにいる事です。手足を縛って行動を封じるのとは違います」
「軟禁の方が良かったか?」
「どちらも嫌ですが、軟禁の方が身動き出来て良いですよ」

手首の赤い部分に舌を当てると少年は嬉しそうな表情を浮かべた。

「優しいんですね」
「前からだろ?」
「誰にでも優しい貴方ですから」

両手を舐め終わり、頬に舌の生温さがじんわりする。

「嫉妬か?」
「だったらどうします?見ちゃったんです、昨日。ミヒロ少尉と抱き合っている所を」
「あれは、彼女が転びそうになったからそれを助けただけ─ん…」
「許さない」

少年は男の言葉を遮り、キスを仕掛けた。少年からのキスはそうそうお目にかかれない。不意打ち中の不意打ち。

「許しません。貴方は俺のモノだって云ったじゃないですか」
「は…、そんなの初耳だぜ?」
「今決めたんです。んぅ…早く証明して下さいよ」
「、ん…何を?」

    ─ドサっ─


男の髪に指を絡めてベッドにゆっくり押し倒す。両足の間に自分の片足を入れ、上から覆い被さった。

「貴方は俺のモノだって証拠ですよ」
「それを云うなら、"俺は貴方のモノ"だろ?」
「違います」

片足を入れている方の膝で男の股間を摩る。

「おっと。これは何の真似だ?」
「貴方の教育です」
「教育?」
「はい。リディ少尉が俺のモノだと云う事を」
「これはとんだ殺し文句だ」

  ─クル ─

「!?わ」
「こんな可愛く嫉妬されちゃ堪んねぇ
「嫉妬じゃありません」

体勢を逆転させると真っ赤な顔を浮かべた少年が頬を膨らます。

「バナージが教育してくれるなら、俺はお前を調教してやるよ」
「ちょ?」
「ああ。良い考えだろ?互いに躾を見直し出来るって寸法さ」
「こ、」

  ─ クル─

「これが大人のやる事ですか!」

少年は力一杯男を掴み、再び体勢を戻す。

「何だ?そんなに馬乗りになりたいのか?騎乗位が好きだとはな」
「気丈??い…」
「そのままの意味だよ。こうして馬に跨ぐ様な姿勢の体位」

腰を掴みその位置に宛がうと少年は膨れっ面から泣きそうな顔へと変わる。

「っ!!!」
「今度は馬の方の乗馬も教えてやるから、今はこっちの乗馬を楽しもうぜ?な?」
「グスっ見損ないました…」

涙をポロポロ流し泣きじゃくる。こうも感情がコロコロと変わるのは子ども特有なものなのだろうか。先程までは、男のような凛々しい少年の顔であった。それが今では駄々を捏ねる子どもそのもの。溢れ出す涙を両手で拭いながらヒックヒックと嗚咽を上げる。流石の男も少年の様子に悪気を感じたのか謝罪した。

「わ、悪かった。もう何もしないから泣きやめって…」
「スン、スン…本、当…?グス…」
「ああ。本当だ」

顔から両手を離すと、赤目の少年がいた。まるで兎のような可愛い瞳になった少年の姿。

「だからもう、」
「ではリディさんは手を出さないで下さい」
「え?」
「今から貴方の好きな騎乗位って云うのを実践してみますから」
「ちょっ!バナージ?」

泣き止んだのも束の間、少年は涙の跡の残った笑顔で、縄を手にしていた。

「バ…バナージ、さん?」
「手を出されたくないので、さっき俺が縛られていたコレでリディさんの両手を縛ってあげます」
「おい」
「慣らしていないのでかなりキツイと思いますが、我慢して下さいね」

一旦男から離れて身に付けていた服を全て脱ぎ去る。男の両手を縛り、ズボンのファスナーを下げ少年は跨り始める。

「慣らすなら、俺がやってやるって」
「黙って下さい」
「バナージ」

動揺を隠し切れない男に少年は極めて冷静な表情と口調で男を諌める。

「黙れ」
「…はいはい」
「はい、は一回」
「はい」

   ─ズッ─

「ん、あ…」
「とんだ女王様だな…」
「は……ぅ」
「いや、王女様か」
「いった…」
「痛いならやめろよ。血が出る」

男は動かずに制止を促す。切れて血が出たら痛い思いをるのは少年だ。よく慣らしもせず、こんな自暴自棄の様な態度の原因は男にもあるが、唐突に行為を始めたのは少年である。頭上で縛られている両手が使えればすぐにでも少年から抜く事が出来るのに。

「っきもち、いですか…?」
「ああ。すっげぇ気持ち良い。この両手が使えればバナージをもっと気持ち良くさせてやれるんだが」

雄の笑みでそう答えると少年はフニャリと微笑み、男の両手を解放した。

「なら、解いてあげます」
「光栄です。王女様」

解かれた両手には少年同様、手首に少し赤い縛り跡が残っていた。腰を掴むと一気に少年を下げる。滑りが悪い為、案の定、少年の太ももから赤い糸が見えた。

「え?あ…いきなり沈めないで!!!」
「了解しただろ?」
「動いて良いとは云ってな、やぁ…」
「バナージが悪い」
「痛っ痛い!!」
「自業自得だ」





貴方を独占したいが為に貴方を監禁した。貴方を振り向かせたいが為に貴方の気を引こうとした。貴方を俺のモノにしたいが為に貴方を犯した。それでも貴方は俺を軽蔑しなかった。それが逆に俺に火を付けさせた。俺を軽蔑出来るようにもっともっと貴方を…貴方が欲しい!!










終。

2011*12*14
監禁ネタ。
襲い受けもしくは誘い受けなバナージ。



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