リンゴデニッシュとチョコレートの透明瓶


<お前が欲しい


   



「街を歩いていたら美味しそうなパン屋さんがあったので」

アフタヌーンティーをしようとリディの自室のベランダでお茶の支度をするバナージ。バナージは午前中に街へ散策、リディは半休だった。バナージが美味しそうなパン屋と云いながら、アールグレイの茶葉をティーポットに入れる。透明なティーポットは茶葉にお湯を注がれると、香ばしいアールグレイを歌いながら色を変えてゆく。茶葉が歌い、踊る。何と美しい光景なのだろう、とリディは紅茶を見ながら思った。使用人が注ぐ紅茶も美しさがあるが、しい人が注ぐ紅茶はまた格別なのだ。
自宅には最低限の使用人と時折帰宅してくる兄弟達がいる。



「リンゴデニッシュ?」
「はい。新発売だって書いてあったので」
「他には?」

紙箱から幾つか取り出すとどれも美味しそうなパンばかりだ。

「アップルパイに苺と抹茶のクロワッサン。フランスパン、チュロスにマロンの食パン。こんなに沢山」

大皿に乗せるが聊(いささ)か見栄えが悪い。お洒落に各種皿に乗せた方が美味しそうに映る。

「一回にこんな食えないな」
「一回で食べようとしてるんですか?」
「違うのか」
「太りますよ?」

マロン食パンを袋から一枚取り分けリディの皿に置く。これで全てのパン達を皿に盛り付けられた。

「太らない様に運動で解消してくれるんだろ?」
「馬を走らせるんですか?」

苺クロワッサンを手に取り、バナージの口に押し付ける。

「夜の楽しみに決まってるだろ?ほら」
「む゙…」
「今なら苺味のキスだな」

仕方なく口を開けて苺クロワッサンをリディから奪い食べる。

「じ、自分で食べますから」

続けて差し出そうとチュロスがバナージに迫る。

「厭らしい意味じゃないから食えって」
「その発言自体が厭らしいんですよ」

チュロスを奪いリディの口に突っ込むと、一口咥えてモグモグと消えていく。

「夜の楽しみは別にセックスだけじゃないって」
「食べながら喋らないで下さい」
「良いだろ?」
「行儀悪いです」

紅茶を啜り飲み込む。

「なぁ」
「はい?」
「抹茶のクロワッサン食っちゃった?」
「食べましたよ」
「俺まだ食ってなかったんだけど」
「え?」

知らない内にリディの分の抹茶クロワッサンをバナージが食べてしまったらしい。


仕方なく最後となったアップルパイを二個リディに渡す事にした。

「お詫びにアップルパイあげます」

スッと皿ごと差し出されたは良いが流石に腹が膨れてきている。満腹ではないものの、腹八分にはしていたい気持ちがある。

「バナージの分だろ?腹一杯なら後で食ったらどうだ?」
「じゃあ、リディさんが、あ〜んってしてくれたら夜に食べます」
「それは俺がやってもらいたい側だよ。今やってよ」
「は?」
「ほら、"リディさん、あ〜ん"って」

アップルパイをバナージに持たせ強要する。

「仕方ないですね。リディさん、あ〜ん」

 −xxx−

「!?」

「これで満足ですか?リディ少尉」

真っ赤なバナージが可愛く見え過ぎて視界に花畑の幻影が映る。

「その続きは?」

調子に乗って悪態つくと、林檎色したバナージはアタフタして紅茶を一気に飲み干した。












  −逃げられない−
−逃げられない−
 −愛してるのに−
     −殺したいのに−


このは満たされる度にソレを忘れていく。

いっその事、綺麗サッパリ帳消しにして欲望のままに生きようか?







終。
2012*06*13
-umi-
箱の鍵であるユニコーンガンダムのパイロットのバナージを憎んでいるリディだけど、恋人としてしてもいる。一方バナージも殺意を感じながらも好意を捨て切れない。報われないリディバナ。
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リゼ