綺麗なその色、赤
─可愛いよな、お前って本当に。何度喰っても喰い足りない。お前の
赤
は本当に綺麗だよ。一ヶ月間、二人の時間を過ごせるなんて─
綺
麗
な
そ
の
色
、
赤
男は彼に笑みを浮かべる。冷たい笑顔だ。自分でもそう思う。もう、それが男の日常である。張り付いた笑顔。
「か、んな…」
「ん?何?」
「…」
彼の頬に男の指が触れる。冷たい手。自分でも己の指が冷たいと感じる。彼の頬が熱い訳ではない。男の指が冷たいのだ。
「
良かった
って顔、してるぜ?俺達二人しか居ないんだから素直な感想云ってくれよ」
頬に
赤
い線が引かれる。男が頬に傷を付けた訳ではない。既に男の指に付着していた
赤
が頬に付いただけ。
「この部屋には俺達二人だけ」
さて、この
赤
はどこの
赤
なのか。
彼の顔には傷は無し。
腕は?
腕も無し。
腹は?
腹は
赤
ではなく、白が付いている。
濁った白が。
足は?
足は…
足に、足首にその
赤
が付いていた。片足に鎖が嵌められている。部屋中、自由に動き回れる程長い鎖。しかし、外へ通じる扉の三十a前までしか行けない。外のは出れないのだ。
彼は監禁されている。男によって。
「そう、二人だけ」
「…」
「痛い?
血
出てるからな?頬に付いたその
赤
は生きている証」
「ぁ…」
男は頬から離れ、足首に触れる。傷付いている足首は見るからに痛そうである。男が彼とこの部屋に居る間は、短い鎖に付け変えられる。男が外に出る時は、逃亡出来ない長さの鎖に変える。短い鎖はベッド以外でも部屋中に何処にでも付ける事が出来る。風呂場でも、キッチンにでも布団でも、何処でも。短い鎖は、何もしていなければ必要以上に傷付く理由はない。行為を強要された時に付く事が多い。身体が自分の意思とは違う風に動くから。
「お前の身体に流れているこの
赤
は、とても綺麗だ」
「、神無にも流れているだろう」
「俺のは汚れている。お前を汚し、自らを汚し、全て汚れた人生を今まで送ってきた」
「おいっ」
「だが、どんなに汚してもお前は綺麗なままだ。羨ましい程に…」
「…今日、はもう、」
足首をそのまま持ち上げる。ドロッとした色が秘部から出てきた。腹の上にある白濁と同じ色。何度か流し出した男の精液がそこにある。
「数日過ごしてて聞きたかった事があったんだが…どうして逃げない?どうして受け入れる?どうして、こんな俺とこんな関係を続ける?」
「あっ」
足首を強く握られた。痛くて足を引こうとしたが、男の力が強くて引けなかった。この関係に同意をしたのは彼。同意を持ち掛けたのは男。断る事も出来た筈。しかし、彼はリスクの多い条件に対し同意したのだ。男としては拒んで欲しかった。持ち掛けた本人が云うのも何だが、正直後悔していた。持ち掛けなければ良かったと。同意されては、男には彼に対して好きにしたいと云う欲が働いてしまう。初めから持ち掛けなければ─この話に期限が決まっていたのは幸いだったのかもしれない。一ヶ月。一ヶ月の間、彼を監禁。その間、
外出禁止、行為は受け入れなければならない。食事や入浴、睡眠に関しては困らせない。
以上の条件の元、二人は条約を結ぶ。明らかに彼だけに不利がある。男に有利な条件でしかない。彼が受け入れる理由は無いように見える。しかし、彼は同意したのだ。
「いやだ」
「条約第三条 俺からの行為は拒んではならない」
「だが、」
「大丈夫。すぐヨくしてやるから」
─ズズ ズ─
「ああア!!」
「さっきも聞いたが、同意した理由聞かせろよ」
男は突然挿れてきた。既に何度も入っているソコは何もしなくてもすんなり入った。
「んん…あっだめ、」
「お前には不利な事ばかりなのに、何故受け入れた?」
「ぁ、あ、」
「ヒドい事されるのが好きとか?」
「そ…んなコト…ない…」
「じゃぁ、何で?」
上下に彼のソレを扱き、射精を促す。
「だ、め…イ─」
彼は自分の両手で口を塞ぐ。
「まだ、イクって云いたくないのか?素直に云えば楽になるのに。俺しか聞いてないって云うのに。鳴く声は沢山聞かせてくれるようになったから、"イク"って言葉も聞かせてくれよ」
「ほら、離せよ」
「あっやめ」
「もう、イきたくて堪らないんだろ?中もソコも弄られちゃイきたくなるよなぁ?ほら」
「あ、ああアァアぁ!!!!」
「良い顔
」
「はぁ…はぁ…」
「見ろよ。俺の顔にお前の精液付いたんだぜ?」
「!!」
彼は顔を逸らす。男には己が飛ばした精液が付いている。初めてだった。顔射される事はあるが、自分がそれをする側になるのは。
「俺に顔射って初めてじゃね?」
「…」
「ま、そうなるように、俺の顔に向かせてたからな」
彼のソレはそうなるように男が計算していた。
「じゃ、俺もぶっかけようかな?」
「んっ」
−ズリ−
男は埋めていたソレを抜き、彼の顔に近付けた。
−ビュク ピュクク−
「ぁ……」
「これでお揃い
精液、顔に付けるなんてエロいよな
」
「あつい…だろ、火傷したら どうする…」
彼は上半身を起き上がらせ男を睨む。
「そしたら、俺の顔は既に火傷してるから。…そんなんで火傷するかよ」
−ドサッ−
「で、理由は?」
折角起き上がったのに、再びベッドへ沈められる。
「まだその話を続けるのか?」
「嫌なら、またスるぜ?」
「そんなにセックスしたいのか?」
「そんなに云いたくないのか?」
「そんなに聞きたいのか?」
「お前こそ、そんなにセックスしたいのか?俺は大歓迎だが」
「色事は何かと互いに秘密にしてる事がある方が燃えると思わないか?」
「まるで、口説かれてるみたいだ」
男は唇を重ねる。
「ん…、別に口説いてない」
「お前に口説かれるなら構わない」
「…」
一旦離れ、今度は彼から深い深いキスをする。
首に両手を回し、舌を入れる。足は腰に巻き付け、鎖が付いているもう片方はそのままに。そして、耳元でこう囁いた。
「 。 。 」
それを聞いた男は納得し、鎖を外し、彼が自由に動けるように解放した。別に鎖を外さなくても良かったが、何となく外した。確かに今まで、彼をそう呼んだ事はなかったかもしれない。彼からは苗字でしか呼ばれない。
「名前で呼んで。心から愛してるから。左京之介」
"お前"じゃなくて。
男はこれより、残り二十日間、彼を名前で呼ぶ事になる。
そして、彼も今から下の名前で呼ぶようになった。
「俺は愛されたいんだ。左京之介から…」
終。
2011*03*21
-umi-
耀次郎同意の監禁ネタでした。
以前、デュラララ!!の方で「愛」を色で強調したので、今回は「赤」で同じ手法をとってみました。多分これからもやります。
神秋は甘々よりも殺伐とした方が好みですが、甘々も美味しいです。
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