海馬社長は悪夢を見る
最近、オレは佳がそばに居てくれなければ眠りにつけなくなっていた。とにかく佳がそばに居てくれれば安心出来た。佳がオレのそばにいれば、居てくれればただそれだけでよかったのだ。
オレは毎夜毎夜、むしろ少しでも眠ると悪夢をみていた。それはオレが幼少の頃の夢。帝王学を叩き込まれ虐待じみたことをされ、結局オレは義父を殺した。それについてを抱えることが辛くなり佳にすべて話した。佳は同情なんて事をせずにただ「それでもオレはそんな瀬人をあいしているよ」とオレを抱きしめ慈しんでくれた。ああ正直 救われた、気がした。
こんなどうしようもないオレなのに。
×××
「…瀬人?どした?」
オレと同じベッドに横になり、腕枕をしてくれている佳がオレに話し掛けた。佳はオレの頭を髪を優しく撫でている。
「…なんでもない」
それはちっぽけなウソだった。佳と目があうと優しく微笑みかけてくれた
「…嘘だろ?」
「バレてしまったか」
「そのくらい解るよ」
「そうか」
「眠れんの?」
オレは“10分だけ眠りたい”と佳に伝えて腕枕をしてもらって居たのだが。
「…眠れない」
むしろ眠気など綺麗にはれてしまっていた。
「膝枕やめる?」
「欲を言うならまだこのままで」
「わかった」
「ー…知らないうちにオレは神経を使ってしまっているのだろうか」
「いや神経使わない方がおかしいし。お前社長だぞ社長」
「…そういえばそうだったか」
「いや忘れたふりとかしてもバレバレだから」
「ー…佳には負けるな」
ごそ、と身体を動かして佳の頬へと触れる。あたたかい。佳は生きている。それが酷く安心できた。
「…死者が語りかけてくるのだ」
ぼそりとオレは呟いた。佳には聞こえない程度に。いやむしろ聞こえて貰いたかった?わからない
「ん?何か言った?瀬人」
「…何も言っていない」
佳の頬に触れたら眠気が急にきた。
「…少し、5分程眠る」
「ん。
…
おやすみ瀬人」
「…ああ
おやすみ」
“好きだ愛している”
という言葉は飲み込んで、オレは意識をはなした。そうだ、佳さえ居てくれれば
海馬社長は悪夢を見る
(佳がそばに居ると不思議と悪夢を見なかった)
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