海馬社長とハッカ味
がらんガランがらん…と、先程からこの室内を占領しているのはそんな音だった。原因はオレと同じく先程からソファーに座り手のひらくらいの大きさの缶をふっている海馬瀬人。オレは瀬人が“何をしているのか”と“その缶は何なのか”というふたつの事が気になっていた。瀬人はやろうとすると何でもしそうだからなあ…とオレはまた失礼なことを考えながらソファーから立ち上がり瀬人の座るソファーに近付いた。すると
「貴様いまオレに失礼な事を考えていただろう」
と瀬人から言われた。う、うえぇ…なんで分かった…え、エスパー?
「…サーセン…」
「佳の顔を見ればそのくらい分かるわ」
いやあなたオレの顔見てなんかなかったでしょという言葉は飲み込んだ。そして瀬人の隣に座らせてもらう。



「ドロップ…?」
さっきからガランがらんうるさかったのは缶に入った飴を出そうとしていたのか。はー、なーる…
「ああ。中の飴が出てこない」
がらんガランがらん…
ガランがらんガラン

がらんガランがらん
…、うるせえ。
「どこ産?」
「忘れた」
さらりと言う瀬人はオレとは違いクールですなあ…でも内心ドロップに向かって苛ついてるだろやーいとかそんな事を思っていると瀬人の手のひらにころんとひと粒。
「お、なにあjごぶっ?!!?」
いきなり口内にハッカの味がしたかと思えば勢い良く飲み込みそうになった。
「いきなりなにすんだテメぇぇぇぇええ!!!」
間違えて喉にでもつまったら待ち受けるは『死』あるのみ。それなのに瀬人はオレの顔も見ずにまたガランがらんとドロップ缶をふりながらひとこと。
「嫌いな味だったわ」
「…ああそう…なあ瀬人」
オレはハッカ味を舌の上で転がしながら瀬人の顎を掴んだ。
「ッ佳、なにし…っ?!?!!んぅ…?!」
オレは瀬人に噛み付くようにキスをした。急な事に半開きだった瀬人の唇を割り込みハッカ味のドロップをオレの舌ごとねじ込んでやる。
「ンぐ…んん、ぅ、はぁ、ンむ…」
そのままドロップごと瀬人の口内を貪れば瀬人からは甘い吐息が漏れ出していき、瀬人がドロップ缶を床に落としたのかガシャンという音が聞こえた。

×××

それから散々瀬人の口を蹂躙して唇を離せば顔を真っ赤に染めた瀬人から涙目で睨まれたんだけど、いやそれかわいいだけだからね。解ってんのかなこいつは。






(いや実はオレもハッカ苦手なんだわ)
(お、おのれぇぇえ…!)
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