海馬社長と宗教家
うまれてはじめて誰かを愛おしいと思ったんです。そんなことがあなたにはありますか?

…何の宗教の言葉だったか。急に路上でお姉さんからそう話しかけられたのをオレは思い出した。2ー3人居たそいつらがやけにオレに構い鬱陶しかったのを覚えている。いや、瀬人とのデートの時刻が迫りに迫っていてオレかなり焦りまくっていたからその言葉以外は覚えてねーんだけどなんかそのフレーズだけ脳みそにこびりついてた。宗教に入る訳ではないけど。

「…ていう事がありまして…」
「ふぅん」
「あのほんとまじ遅れてすんません…」

KC総帥たる社長である海馬瀬人とのデートに遅刻したオレ強制土下座してます。自分から。いや遅れたのは5分だけど待たせちゃったのは事実であり…ああ瀬人が怖くて表情を伺えない現在のオレKC社長室。
こつりと瀬人の靴が動いた音が聞こえた。でも瀬人からなんも言われんので顔上げれない。
「…佳」
「はい」
「貴様がこの世で一番愛しているものは誰だ?」
「ぁ?瀬人ですね」
「…オレも佳のことを愛している」
「うん両想い」
そんなん前から知ってる。嫌になるくらい知ってる。痛いくらい知ってる。
「……映画の試写会まで間に合わせるから車に乗れ」
「あれ?良いの?」
思わず顔を上げたら少々照れているらしい瀬人が居てオレは臆面くらい瀬人がめちゃくちゃかわいくて映画の試写会とかぶん投げそうになったのは秘密である。






(っどどうした?佳)
(映画観てる間手でも繋ごうかと)
(ふ、ふぅん…!)
(おー始まった)
(…これで映画に集中など出来るかああぁぁぁああ!!!)
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