王様が虫歯
ばりばりばりばりとオレは今煎餅を齧っていた。オレの隣にはバイオをプレイ中だが追跡者にやたらめったらくらわされているアテムが居た。
ばりばりばりばりばりばり
「アテム今日めっちゃやられてんな」
「…い…いやその…」
ばりばりばりばりばりばりばりばり
「またくらった」
「…ま、前田くん…!」
「あ?」
なに?と聞くオレの隣で今にもPS2をポイしそうなアテム。
「…オレが虫歯なの知ってるだろ…!」
豆腐メンタルさん半泣きである。
「うん」
「ぅぁああああああ!!!!!」
「泣くなよ」
実はお前の相棒こと遊戯に『前田くん今日ちょっとアテムの奴懲らしめて』って言われてんだごめんねお茶請けが硬いもん責めで。つか遊戯こえええぇぇぇぇええ!!!!!

×××

結局アテムはバイオをぽいした。膝を抱えてなにやらぶつぶつ言ってるんだけど何言ってんだろエジプト語?呪詛?こっち見ねえし。
「アテムよ虫歯痛えの?」
試しに聞いて見た。
「めちゃくちゃ痛いぜ!」
「即答かよ歯医者行けよ」
「…ドリルが怖い…音も怖い…」




…、さすが豆腐メンタル。
「虫歯ねえ…」
オレが前のめりになりアテムの頬に触れるとアテムはぼっと頬を赤くした。虫歯だから恥ずかしいのかオレに触られてるから恥ずかしいのかこれ判断つかんわ。
「どこ痛えの」
「…左奥から3番目」
「あー」
奥は痛い。つか遊戯の話じゃ3日前くらいからろくに飯食ってねえらしいしどうすりゃ良いのかこれは。いや歯医者に行きゃ良いんだがこれは中々行かんだろうなあ。オレはなんとなくそのままアテムを抱きしめたらアテムは身を硬くした。
「どうしたもんかねー」
オレがため息と共にそう言うとアテムがオレの腕の中でごそりと動いた。
「…じ、じゃあなめてみてはくれないか…」
「へ?」
今なんつった。アテムの顔を見ると先ほどよりも真っ赤。本気で真っ赤。
「…舐めれば、…治るって 言うだろ…?」
“虫歯”という立場を利用する気かアテムよ。
「…口の中でも有効なんかね?」
「舐めないとオレ今日も飯くわないぜ?」
「調子に乗んなボケ」

オレはそう悪態をつくけど笑いつつ、アテムの唇にオレのを合わせた。アテムの口内の虫歯を刺激しないように舌を恐る恐る入れた。
「ちゅぅ、ん、ちゅ…」
目をあけると真っ赤なアテム。…、かわいい。アテムの舌を逃さないように絡めとる。…、もーちょい…と思って虫歯であろう箇所をぺろりと舐めたらアテムの体が揺れた。
「は…っん、前田く…んぅ」
「んン…、ふ、これで、良いか…?」
「ん」
名残惜しく唇ははなれた。

「…どう、だった?」
アテムは顔を伏せてしまったので表情が良くわからない。覗き込むと涙目で、
「気持ち良かったし嬉しかった…のに、でもやっぱ虫歯いたいぜ…」
「さっさと歯医者行けボケええぇぇぇぇええ!!!!!」






(ま、前田くん歯医者について来てくれ…!)
(泣きながら言わんでも良いだろ…)
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