イメージの崩壊(食い逃げ犯様より)
※サソリが里抜けをしていません




カンクロウはある人物に恋をしていた。

約十年前。

自分の体すらも傀儡にしてしまった忍が居る。その噂に興味を持ったことがきっかけだった。

人間が傀儡になるということは傀儡が自分の意思で体を動かすということで。

幼いカンクロウはそれはそれは素晴らしく美しく動く傀儡を想像しながら、その噂の忍――サソリ――を見にいった。指導を頼む訳でも話しかける訳でもなく、ただ見るために。

そしてカンクロウはとある資料室に潜り込みそこに居たサソリを目の前にして、

(綺麗、じゃん…)

自分よりもずっと歳が上の相手に一目惚れをした。

顔にかかる髪を片手で払いながら資料を睨み付けるサソリは、傀儡になったからか人間というには少し違和感があり、一言で言えば人間離れした美しさがあった。

そんなサソリにカンクロウは幼い恋愛感情を抱き、そしてそれを持ったまま成長をして傀儡師になった。







そして成長したカンクロウは、サソリに近付くこともせずにたまに遠くから見つめる日々をおくっていた。

サソリはとても美しく、見ているだけで満たされる。

カンクロウの恋は、そんなどこぞの少女漫画のような清いものだった。

テマリが知ったらきっとドン引きするだろう。

そんなことを気にもせずに、カンクロウは今日もまたサソリを見つめる。

今日はサソリはある公園のベンチに座り、傀儡の設計図だろう紙を睨み付けていた。

(今日も、凄ェ綺麗じゃん…)

遠くの民家の屋根の上でうっとりとサソリを見ていれば、カンクロウの肩にだれかの手が乗せられた。

「カンクロウ、こんなところに居たのか。」

「…ッテ、テマリか。」

「何をどもっている?」

男を見つめているところに声をかけられて焦ったからどもってしまったのだが、わざわざそんなことを言って引かれることもないだろう。

「…いや、急に声かけられて驚いただけじゃん。」

「情けないな、それでも忍か?」

「うるせェじゃん。…で、どうしたんだ?」

「ん?いや、そのうるさい隈取りが視界に入ったから文句を言いにきただけだ。」

「頼むからもう少し弟を可愛がって欲しいじゃん。」

「何を言っている、十分可愛がっているだろう。」

「我愛羅をな。」

「我愛羅をだな。」

フン、と笑ったテマリから先ほど見つめていた公園へと視線を移せば、サソリはいつの間にか居なくなっていた。

サソリが居ないのであればもうこの場所には用はない。

「…んじゃ、傀儡の手入れでもするか。」

カンクロウはよっこらせと親父臭い掛け声をしながら立ち上がりテマリに文句を言われた。

「オッサン臭いぞカンクロウ、一応まだ十代だと言うのに…。」

「一応ってなんだよ。」

サソリをぼんやりと見つめて、サソリがその場を去れば自分も去る。

それがカンクロウの休日の過ごし方だった。






その過ごし方が変わったのは、ある普通の日からだった。

「よう。」

「…え、」

カンクロウがいつも通りサソリを見ていれば、背後から声が聞こえた。

そして面倒に思いながら後ろを振り返るとそこには、

「…サソリ…!?」

「さんを付けろ。」

「え、だってさっきあそこに…!」

たった今自分が見つめていたサソリが何故か目の前にいる。そのことに混乱したカンクロウが問えばサソリはあっさりと一言。

「ああ、アレは影分身だ。」

チャクラの無駄遣いとはこのことだ。

さらりと言われた言葉にカンクロウは目を見開くが、そんなことなどお構いなしな様子のサソリはカンクロウに詰め寄る。

「…お前、いつも俺を見てるな。」

「え、いや…それは、」

「俺に惚れてるんだろ?」

その言葉は疑問符があるもののほとんど決め付けるような言い方で。

完全に図星なカンクロウは何も言うことはできなくなり黙り込む。

そんなカンクロウの様子を見たサソリは嬉しそう笑みを浮かべ、カンクロウの顎に手をかける。

「…え、は?なにやっ―――」

「付き合ってやろうか。」

「――て、……え?」

「テメェは“え”しか言えねーのか。そればっかり言いやがって。」

(文句言われても困るじゃん…!)

あまりにも突然で理解しがたい状況に心の中で叫ぶカンクロウだが、サソリは構わず言葉を続ける。

「ほら、この俺が付き合ってやるって言ってるんだぜ?さっさと頷かねェか。」

俺は待つのが嫌いなんだ。

そう続けたサソリの眉は不機嫌そうに寄せられており。

綺麗で。
美しくて。
清くて。
人間離れで。
優しくて。

カンクロウが抱いていたサソリのイメージは、見事に打ち砕かれた。

カンクロウは自分がずっと想っていた相手のイメージが崩れさり、世界が終わるような感覚に襲われた。

(イ、イメージ…違…)

「…オイ?」

まるで絶望したような表情で固まったカンクロウを不審に思ったサソリ。

そんなサソリに声を掛けられて自分の世界から現実に帰ってきたカンクロウ。

「……っ、遠慮しとくじゃん!」

我に帰ったカンクロウはサソリを突き飛ばし、瞬身の術まで使って家へと逃げ帰った。

そして残されたサソリはと言うと、

「……アイツ、俺に惚れてんじゃ……は?」

呆然とした表情で呟いた。

実はカンクロウに片思いをしていたサソリ、カンクロウが自分に惚れていると知りいてもたってもいられなくなったため、感情のまま今回のようなおかしな行動を取ったのだが…。

可哀想に、カンクロウは自分のイメージとは違ったサソリへの恋心をなくしてしまった。







それから砂の里では、サソリをただの若作りのオッサンとしか見れなくなったカンクロウに、全力で言い寄るサソリの姿が見られるようになった。


end






……………………………
相互文ありがとうございます♪
カンクロウの清らかな初恋がwww胸に秘めた思いがwww可哀想だけどもwww笑えるwww
旦那がブチ壊してくれるのがたまりませんな(*´艸`*)
確かに見た目だけならすんごい美形ですもんね旦那はwww
中身あんなんですけどwww
見た目はこども中身はおっさん、赤砂のサソリwww
この後日談とか気になる(^q^)
逃げ回るカンクロウを追い回す旦那(*´Д`*)
ふふふふ(*´艸`*)

素敵な相互文ありがとうございました(≧∀≦)
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