お誂え向き



赤と白と青、それとあのふざけてる桃色
あいつを構成する色の全てが嫌いだった

「お前、何、その格好」
「天使」

真っ白なワンピースを着ているそいつの頭はいつものお団子頭じゃない。降ろされた髪は想像以上に柔らかそうだった

「へえ、あ、羽まであらァ」
「お前こそ何アルカ、その格好」
「ホスト」

白と青と桃色。変わらず嫌いな色なのに、こうして見ればなんだ、存外悪くない

「よく似合ってるネ。警察なんかよりお前はこっちのが性に合いそうヨ」
「よく分かってんじゃねえか」

お前も、悪くない。そう言おうとしてやめた。馬鹿馬鹿しい。こんな格好をされてちゃ全力で喧嘩も出来ない

「でも、あの不吉な格好のが見慣れてるアル。ナァ?汚職警官」
「うるせぇな、お前もいつものちんちくりんな格好のがまだましでィ」
「私は美少女だからなんでも似合うアル」
「馬鹿じゃねぇの」

あの、赤色が恋しい。真っ赤な、あの服が好い。俺もあの、着慣れた不吉を纏いたい。着替えたらきっと、楽しい喧嘩が出来る

「んじゃ、着替えたらまた相手してやるヨ」
「別に俺は今のままでもやってやるぜ?」
「なんか、それ、見た目がなよなよしてて張り合いが無さそうアル」
「ああ。お前もなんか、そこらへんにいる雌豚と変わりなく見えらァ」

その格好はなんだと聞いたら天使と答えた。ああ、天使。こんな格好をしてやってくるのなら俺はきっと渋らずに天国とやらに向かっちまいそうだ。もちろん、俺が死ぬわけはないんだけれど

「じゃあ、またな天使さんよ」
「精々馬鹿な女から金巻き上げて来いヨ、ホストさん」

くだらない冗談を言い合えるのは互いの格好のせいか。悪くないとは思うけれどつまらない。
あの気に食わない赤と白と青、それから桃色。気に食わないあの色をそれでも俺はどうも気に入っているらしい



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リゼ