『8月末に皆で夏休み最後の思い出を作りたいな…作ろう』




夏休みに入る前、学期末最後の委員会の時に立花先輩がぼんやり呟いた言葉が、まさか本当に実行されようとは



「ふぅ…やっと着いた」


僕は今、暑さで白く光る忍術学園の門まで来た。背には新学期に必要な物を携えて、早々と実家を出てきた理由は二つ

一つは、作法委員長である立花先輩が収集を呼び掛けた為、もう一つはここでずっと待っている人がいる為

新学期まではまだ早いけど、実家にまた戻るより先輩と…綾部先輩と残された休みを過ごしたい

四年生は夏休みなしだから、今もきっと綾部先輩はこの暑苦しい空の下で趣味に没頭しているに違いない。
まったく…あの人は本当に、


「せーんぱい!」

「うわぁ!…って、伝七!兵太夫!」


急に体に何かが引っ付いたと思ったら、下からさんさんと輝く笑顔が二つ並んでいた

「お久しぶりです浦風先輩!暑中―」

「先輩あっついですから早く中に入りましょうよ!」

「ちょ…兵太夫!ぼくはまだ浦風先輩と話してる最中だろ!邪魔するな!」

「こんな所で話し込んだら浦風先輩溶けちゃうだろ!」


二人は僕に引っ付いたまま蝉のように自身の主張をぶつけ合う…あ、僕は今木なのかな


ぁ、なんだかぼんやりしてきた…兵太夫が言うように、溶けちゃいそう…門が遠くなって、

「伝七のぶりっこ!」

「兵太夫のあほんだら!」

「二人とも…ちょ、」









「私の藤内から離れな」








ぁ、綾部先輩…


白から紫へと変わる世界を見たあと、僕はまるでそうあるべきだったように力強い腕に抱かれ、身をあずけた






何かに呼ばれた気がして瞼を開けると、心配そうに覗き込む伝七と兵太夫…あと、立花先輩と、


「藤内…大丈夫?」

「ぁ…綾部先輩」


どうやら僕は気を失ってしまったらしく、寝ている間に立花先輩も到着したようだ。これで僕ら作法委員会は全員そろった

「おぉ、藤内大丈夫か?」

「立花先輩お久しぶりです…あ、もう大丈夫です」

「ふむ、あまり無理はするなよ…まぁ、夜まで休め」

日焼けを知らない立花先輩の白い顔が、《夜》という言葉に、にやりと歪む…今夜、何かあるのだろうか

「立花先輩!勿体ぶらないで教えて下さいよ!」

「どんな思い出を作るんですか?」

元気な後輩の声に立花先輩はふむと頷き仁王立ちで微笑む。嫌な予感しかしないのは僕だけだろうか


「ふふふ…今夜は皆で『肝試し』をしようと思う!」

「おやまぁ…肝試しですか」

「わーい!伝七をちびらせてやる!」

「何を!い組は肝試しも優秀だ!」


立花先輩は各々の主張に耳を傾けた後、静まれと片手を上げる。すると自然に部屋が静かになり蝉の声しか聞こえなくなった

「実はな…もっと楽しい思い出にするためにある《委員会》を、作法委員主催の肝試しに招いてある」

『委員会?!』

「立花先輩…それはいったい、」


「ふふふ…作法委員と戯れる事が出来る幸運な委員会は、これだ!」









忍の肝試しへGO




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