舞踏会への招待状
「数馬、なんか機嫌いいね?」
「うふふ…当たり前だよ!だってもうすぐ」
「もうすぐ?」
「ホワイトデーだから」
ガタンッバタンッ
今日は昼休みに皆でそろってお昼ご飯を食べている。各人委員会からの呼び出しがなかったし、私も綾部先輩に捕まってないから本当に皆そろうのは久しぶりだ…そんな事はどうでもいい、今なんて言った?
「あ〜お返し考えとかなきゃな!」
「基本は100倍返しだよ…私にも返してね」
「数馬基本は3倍だろうが!おまけにお前板チョコ一枚だけだったじゃないか!」
「…小細工なしの思いってやつだよ」
「小細工なしの義理チョコか…数馬うまいな」
「…ホワイトデーって…いつ?」
一気に血の気が引くのを感じる…ま、まずい
「藤内?一応14日だけど…女が焦る事ないよ、男が貢いでくれる日なんだから」
「………いや」
先月のバレンタインの日に晴れて憧れだった綾部先輩とお付き合いをする事になったのだが、その時先輩はバレンタインなのに私に贈り物をしてくれた…それは今でも私の髪に堂々と飾られているのだが
つまり私が今恐れているものは…私もホワイトデーだからとか関係なく贈り物を用意しなければならないという事だ…ホワイトデーなんてすっかり忘れてた
どうしよう、綾部先輩何が欲しいだろうか
「三之助!男性は何もらったら嬉しい?!」
「…そりゃ処じょッ」
「三之助ッ昼間っから藤内に変なこと教えないでよ!」
「私は藤内の手作りクッキーがいいと思うぞぉ!それにしろ藤内!」
「いいアイディアだね左門…でも耳元で叫ばないで」
どうやら話の流れで手作りクッキーになりそうだ…まぁクッキーならすぐ出来るし、大丈夫だろう
だんだん話も変わってきて、皆でワイワイ盛り上がった。この時の私は本当に平和でのんびりしていたな、と思い知る事となる
事の始まりは委員会も終わった放課後に高等部の生徒会に呼ばれた事だ
まだ中学生の私に何の用かと思ったら、プリントを数枚手渡された
【ホワイトデーレース】
そう題名が付けられた企画書に、頭が痛くなった…これはいったい
高等部の生徒会長は私と向き合うように座り、説明しにくそうに口を開く
「実は高等部でどんなイベントをしたいかと募ったところ…このホワイトデーレースが出てな」
「…で、このレースって何ですか?」
「女子に人気のある男子にホワイトデーのプレゼントを持って逃げてもらうんだ。その男子を女子が捕まえてプレゼントを奪えばその女子の勝ちとなる、逆に時間内に捕まらなかった男子はそのまま勝ちとなる…言わば鬼ごっこみたいなレースだ」
「…乱闘騒ぎになるのでは?」
「一応全員参加ではないし、こちらも全力で警備にあたるから心配はしなくて大丈夫だ」
それでだ…と会長は企画書とは別のプレゼントを私に見せる、なんか嫌な予感しかしない
「実は君の恋人である綾部喜八郎君にこのレースに参加してもらう」
「綾部先輩が参加を了承したんですか?」
「いや…ただこれは全学年女子の希望だから嫌でも参加してもらうよ」
「……はは」
お付き合いをして1ヶ月近く経つが、綾部先輩の人気が衰える事はなかった…女の私が言うのも変だけど、女って強いな
「それで…なぜ私が呼ばれたのでしょうか」
「君は綾部君の彼女だからね、一応高等部でどういう事をするか教えないと…これで喧嘩して別れたなんて事になったらこちらの責任だし」
「はぁ…わざわざありがとうございます」
まぁ綾部先輩の事だからスタートしてすぐ終わるようにそこらへんの女子にあげちゃうだろうから心配も何も…ん?
「会長、因みに綾部先輩が持つプレゼントって何ですか?」
「う…、えっと…」
なんか急に会長がもごもごし始めた…どんなプレゼントなのか
「怒りませんからどうぞ…」
「あ、ありがとう…実は綾部君の、セミヌードのブロマイドを…」
セミヌード?…は?
「男子が本気で逃げたくなるようなプレゼントがあまり考えられなくてね…って浦風さん大丈夫?!」
「…ッゲホゲホ…」
これは…まずい、綾部先輩には真剣に逃げてもらおう…セミヌードなんて、私も見たことがない…って私なに考えてるんだ!
「会長…レース当日、私観客として来てもいいですか?」
「もちろんだ!…ちゃんとテント付き来賓席を用意してあげるから…了承してくれる?」
「…はい」
「レースは14日だよ」
それまでに…
綾部先輩のやる気を
引きずり出さなくては
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