深く(綾←浦)
パラ…パラ…


「…ッいたた、」

今日は本当に最悪な日だった
委員会対決で、三年生である僕が多く点数を稼がなければならなかったのに…一年生よりも早く脱落してしまった

立花先輩はため息をし、怪我をしなかったのならそれでいいと頭を撫でてくれたが…心底僕に失望しただろう

自分は頑張った…つもり、そのつもりがいつも結果には反映されなくて結局失敗ばかりしてしまう

それだったら本当に地味に生きればいいものを…良いところを見せようと躍起になるから…後で無様な姿をさらけ出してしまう

「…今日の、は深いな」

そして今も落とし穴にかかり膝を抱え込むしか出来ない
あまりにも深くて…1人じゃ、

「何も出来ないんだね」


「…ぁ、綾部先輩」

地上から僕を見下ろす綾部先輩の顔は無表情なのに、どこか汚ならしい物を見ているかのように冷たいものだった

何も言えず黙っていると、聞いたよと言葉が降ってくる

「…浦風、君って本当に使えないね…忍者向いてないんじゃない?」

「…ッそんな、こと」

「君に何ができるの?」


何が出来るのか…

自分でも分からない、それくらい僕は

何も出来ない

今度こそ何も言えなくなった僕に、やはりこの程度かと吐き捨て

「何も出来ない奴は作法委員会に必要ない」

と残して、去っていった


「…ぅッ……ふぅ」


藤内!今日もまた自主練習するの?

うん

毎日、毎日…身体を壊さないようにね

大丈夫だって!…それに、僕には

近づきたい人がいるんだ


「ひっくッ…んぅ…」


こんな惨めな、辛い思いをするなら

「あ…にッ、ならな、よかったッ」


好きにならなければ

よかった




パラ…パラ…


「浦風、大丈夫か?」

「はい…すみません」

しばらくして、落とし穴の底でうずくまっている僕を食満先輩が見つけ、助けてくれた

抱かれる形で地上に引き上げられる…食満先輩、力強いな

「全く、綾部の奴こんな深い落とし穴掘りやがって!」

「…もっと、深ければ」

「何か言ったか?」

「………いいえ」

もっと深くて、誰にも見付からない所まで落としてくれれば良かったのに

「…浦風?眠いのか?」

また目から込み上げて来るものを感じ、目を瞑り身体を食満先輩に預ける

この温もりが…貴方であれば良かったのに



綾部先輩

戻る
リゼ